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「この子は特別です」 「じゃあ父親である私のことも特別扱いしてほしいな」 指の腹にイヴレスの血が滲み始める。 不敵に光る刃へ伝う魔物の一滴。 これまで見たことのない濃厚なる血の雫に銀は目を奪われた。 まじまじと凝視してくる銀に気分をよくしたイヴレスは、好奇心が先走って警戒を疎かにしている銀に口づけようと。 無防備にうっすら開かれていた嗜虐的唇に唇を重ねようと……。 がぶり! 「あ、痛い」 脅威の寝起きのよさで目覚めたみるくが銀の顎を掬おうとしていたイヴレスの手に噛みついた。 「フーーーー!!」 まるであの時のように、クロへ敵意を剥き出しにしたように、小さなみるくはイヴレスを威嚇する。 猫耳と尻尾だけじゃない、以前の小みるくの頃にはなかった、蝙蝠羽根にも似た翼まで生やすとすっぽんぽんで不安定に飛び立ち、銀にぎゅっとしがみついた。 芋ジャーの袖口にメスを仕舞った銀は足元に落ちた襟巻を拾ってみるくを包み込んだ。 立ち上がり、指の腹にできた傷口を一舐めして完全に止血したイヴレスを見、告げる。 「僕ぁ、みるくとアジトへ帰ります」 「だめ」 イヴレスは即答した。 少年じみた人懐っこい笑みを浮かべたまま。 みるくは銀の腕の中で彼へのフーフー威嚇をやめない。 銀は「このえろおやじ」と心の中と嗜虐的唇で同時に呟いた。

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