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街路樹に囲まれた街中のカフェテリア。
麗らかな昼下がりを思い思いに寛ぐ一般人に紛れ、マッドネスの「残念紳士なる血塗れ変態」こと銀ものんびりお茶を飲んでいた。
「ままーおいしい」
膝の上にはみるくが座っている。
真っ黒な猫耳をぱたぱたさせ、午前中に買ったばかりのお洋服を着せてもらい、ホイップクリームの添えられたスコーンやケーキを食べて、とってもご機嫌だ。
「ままーたべてー」
以前のように翼は貝殻骨として仕舞うことができたみるく、ぐるりと振り返り、手掴みにした苺を銀にずいっと突きつけてくる。
銀はいつにもまして色づく嗜虐的唇をふわりと綻ばせて、小さな指先から苺を食べた。
「おいしー?」
「ええ、おいしいです、みるく」
「やったー」
「……銀……?」
呼びかけられて銀は振り返る。
落ち葉に飾りつけされた石畳を通行人がカツカツと行き来する中で。
「白衣の魔女なる年齢不詳の悩殺ぼでぃ」こと、変装したグラマラスが口をあんぐり開けて突っ立っていた。
「あんた銀なの?」
「グラマラス、昨夜の資金調達はうまくいきましたか?」
両手に持ったブランドショップの紙袋をがさがさ言わせて、まだ口をあんぐり開けたまま、グラマラスは銀とみるくのすぐ隣に断りもなく座った。
「図々しい女ですねぇ、勝手に同席して、長年フリーでいるからってそんなに人恋しいですか」
大き目のサングラスにウィッグをつけ、ニットにデニムというシンプルなスタイルのグラマラスは。
メタルフレームの眼鏡、下ろしたサラサラ銀髪、うっすら自然なメイクで顔を彩って、明らかに女物の服を着ている銀を凝視した。
「なんで女装してんの?」
「えろおやじに着せられたんですよ、変装として」
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