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「痛いよ、アマラントス」 様子見の段階にある銀の代わりに頑張る小みるく、がぶがぶイヴレスの手を噛んでいたかと思えば。 ばりばりばりぃ!! 興奮したのか、背中の服が裂けるなり、仕舞われていたはずの蝙蝠羽根じみた翼が一瞬にして飛び出してしまった。 「ああ、アマラントス、こんなところで翼を出して、お行儀の悪い子だ」 「貴男のせいですよ、イヴレス」 「これで隠しましょ」 グラマラスは足元に置いていた紙袋の一つからショールを取り出し、今にも飛び立ちそうな勢いのみるくに巻きつけた。 銀にショールごと抱きしめられると、興奮は冷めたらしく、翼を折り畳んで胸にしがみついてきた。 「まま、みるくの」 グラマラスが言った通りなのかもしれません。 僕を見失い、寂しがったこの子は、混乱し、ドラゴンへ姿を変えて、街を彷徨って。 僕を見つけて、嬉しくて、この〈かいな〉に抱き止めてもらうため、小さい姿に。 「ええ、みるく、僕ぁ貴方のものです」 安心させるように銀がしっかり抱いてやれば、みるくは、こてっと眠ってしまった。 「やだなぁ、私はお義父さんになるつもりはないからね、しろがね?」 テーブルに頬杖を突いたイヴレスは指に掬った生クリームをぺろりと舐め、例の笑みを。 カフェテリアの一角で起こった出来事に周囲の客はちらりと視線を向けた程度だった。 映像作品の隠し撮りか、子どもにコスプレさせてはしゃいでいる家族連れ、と見做したようだ。 昨夜のドラゴン騒動、定期的に起こるマッドネスの破壊活動に比べれば、何てことはない昼下がりの温い出来事だった。

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