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「こうも泡だらけだと、シャンプーがちゃんと洗い落とせたのかどうか、よくわかりませんねぇ」 「にゃー」 「気持ちいいですか?」 「にゃ!」 翼は仕舞い、髪と一緒に耳も洗ってもらったみるくは満面の笑顔で頷いた。 一端シャワーを止めると、ぶるぶるっと、頭を振って水飛沫を四方に散らす。 耳の付け根辺りを優しく掻いてやると、ごろごろ、喉奥で満足そうに呻吟した。 バスタブの中でみるくと向かい合う銀はいとおしそうに微笑みかける。 「だけどお風呂は久し振りです、アジトのラボにあるのは味気ないシャワー室のみなので。お風呂はやっぱり温まっていいものですねぇ」 「それなら今度、夜景の見えるバスルームつきスイートルームにでも泊まろうか、しろがね?」 銀は苦いため息をついた。 いつにもまして濡れた光を帯びる妖しげな双眸を、ちらり、横に向ける。 視線の先には胡座をかいて座った着衣姿のイヴレスが。 「それともここを改装しようかな、夜景は見放題なんだから。壁をくりぬいて大きな窓をとりつけて、ね」 銀はまたため息をつく。 とことんその存在を無視していたかったが、喋りかけられると、そうもいかない。 「……イヴレス、僕ぁ、常々疑問に思っていたのですが」 「私は見事なまでに今はフリーだよ、しろがね」 「んなこたぁ知ったこっちゃあないです、貴男、どうやって生活費を?」 「株とか宝くじとか」 「…………」

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