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鳥達のさざめきがどこからともなく聞こえてくる。 風が吹いて緑の香りが隙間なく辺りに満ち、澄んだ音色を奏で、はらはらと葉が舞い落ちる。 クロは海の手を引いて、向こうがもっと綺麗だと、雑木林の奥へ進む。 さらに遠退いていく少年少女達の楽しげな笑い声。 海は怖くもなく、心細くもなく、クロに寄り添って一緒に歩く。 木々に閉ざされるようにして青く透き通る小さな泉があった。 海は綺麗だと喜び、小さな恋人の控え目ながらも純粋な喜びようにクロも僅かに口元を和らげた。 「じゃあ、そろそろ、戻らないと」 そんな言葉を聞くと。 一緒にいるのに、泉のように、滾々と湧き出る嫉妬。 本当、こんなにも人間らしい無様な感情は初めてだよ、海。 「もう少し、海」 「あ、クロさん……」 小さな恋人を抱きしめて腕の中に閉じ込めてしまう。 抱きしめると、どうしても肌の熱を指先が追って、物欲しくなって。 「……クロさん?」 純粋な彼を根こそぎ求めてしまう。 日差しが遮られているため現在時刻が把握しづらい雑木林の奥深く。 少年少女達の無邪気な笑い声はすっかり途絶え、鳥達の鳴き声もいつの間にかぱったりやんで。 「ぁ……っ……っ……」 海の上擦った微かな声が静寂に呑まれていく。 「クロさん……恥ずかしい……です」

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