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27-4
「外だから? 誰もいないから大丈夫だ」
「で、でも……んくっ」
香り豊かな白樺の根元、クロに背中から抱きしめられている海は身を捩じらせた。
実験解剖を繰り返す、繊細な処理を難なくこなす長い指先は海の両足の狭間に。
艶めく髪に頬を寄せ、肌の熱が上昇していくのを体伝いに噛み締めながら、そこに集中して愛撫を施す。
クロの施しは、時々、まだ小さな海の許容範囲を超えそうな瞬間がある。
「ゃぁ……っぁ……クロさ……ん」
「どうしてだろうな、海」
「ぁ……っぁ……っ……?」
「お前のことになるといつも自分を制御しきれない」
「……クロさん」
白衣に包まれた両腕の中で海は顔を上げ、少々きつい体勢になるものの、背後にいるクロへ視線を向けた。
黒縁眼鏡越しにクロと目が合う。
クロは、何故か寂しそうに、小さく笑った。
「一緒にいるのに寂しいなんてどこまで飢えれば気が済むのかな、俺は」
木の上にとまったおたまが二人をこっそり見下ろしていた。
「……僕だって……寂しいとき、あります」
「俺はいつも寂しい」
「ぁ……っ、ま、待って……っ」
クロの手がより愛撫を深めてきた。
濡れかけてきた先端をくちゅくちゅ鳴らし、透明な雫をもっと強請る。
幼さの残る隆起を掌で包み込んで上下に撫で擦る。
柔な肌をおもむろに食み、微かに、そっと、湿らせて、噛んで。
「クロ、さ、ん……っぁっぁ……ん」
「この世界を壊したら海ともっと一緒にいられるかな」
「え」
クロは海にキスした。
「俺がマッドネスだってこと忘れるなよ、海?」
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