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第10話 紅葉狩りと初めての……。

 次のデートは俺のプラン、と言う事になって、散々悩んで調べて迷った挙句、開き直って、少し遠くの公園に紅葉を観に行く事にした。もちろん、寒さ対策にミツキさんの分の上着も用意したし、飲み物も暖かい物をポットに用意した。ホッカイロまで用意したけど、ミツキさんは、万全の体勢で来てくれて、お洒落なストールを巻いていた。その姿も、可憐で可愛かった。  紅葉狩りをして、公園近くの定食屋で秋を感じる定食を食べて、また紅葉狩りをして。 「栞にしよう」  葉っぱを拾って、そう言ったミツキさんは、ちゃんと、楽しんでくれたようで、俺は安堵した。地面に落ちた葉っぱに、躊躇もせずに触れていたのが、印象的だった。それから、ミツキさんは、団栗を幾つか拾って、その多様性と種類を説明してくれて、俺の知識もちょっとだけ増えた。やっぱり、ミツキさんの知識量は、膨大だった。  夕食は食べず、久し振りにユートピアに行きたい、と言うミツキさんのリクエストに答え、バーに行く事になった。  お腹が空いた、と言うミツキさんに合わせて、食事を摂る段になって、初めて、俺は、ユートピアは食事も出している、と言う事を知った。そして、意外にも美味しい事も。いつかみたいに、分け合って食べながら、俺は、今までのユートピアの利用の仕方を、少し反省していた。デートの待ち合わせ場所のような利用の仕方しか、して来なかったから。  そして、現在に至る訳であるが。  カウンター席の定位置に座って、ミツキさんが俺をじっと見つめて来る。バカみたいな話だが、俺は、ミツキさんの事がもっと、もっと好きになっていた。だから、ただでさえドキドキする心臓に悪い顔なのに、それ以上にドキドキしてしまって、苦しいくらいだった。 「ナオって理想的な恋人だよね」  ミツキさんの意外な言葉に、俺は一瞬息が止まり掛けて、それから、かーっと顔が熱くなるのが分かった。 「あ、あの、ありがとうございます……」 「褒めてないよ」  すかさず言われて、さーっと青ざめる。ああ、俺は何か失敗してしまったんだ、と思った。喉が詰まって苦しかったが、何かを言わなくては、と口を開いた。 「えっ、あっ、す、すみませんっ」 「直ぐ謝んないの!」 「あ、す、すみ……う、その……」  俺の謝り癖は、もう、本当に息をするのと同じくらい自然に出てしまう事で。それを止められて、何を口にして良いのか、分からなくなる。 「本当に、何だかなあ……」 「す、あ、その……」  ふう、とミツキさんが息を吐き出す。視線を外されて、表情の読めない横顔に、どうしてだか分からないが、俺は、泣きたくなった。  暫くの沈黙の後、ミツキさんは、俺に向き直ると、徐に、そっと手を握って来る。 「それで」 「は、はい!」  声が上ずってしまったのは、仕方の無い事だった。ミツキさんの手は、やっぱり、温かかった。 「この後、どうする?」 「え?」 「え、じゃなくて、ホテル行く?」  思わぬ事を言われて、俺は飛び上がる程、驚いた。だって、余りにも脈絡が無さ過ぎやしないか!? 「え、ええっ!?」  口からも、驚きの声が漏れる。俺は、今日は赤くなったり青くなったり、そしてまた、赤くなったり、忙しいな、とぼんやり思った。 「行くの? 行かないの?」 「い、行きます!!」  是非を聞かれて、思わず答えていた。ミツキさんは小さく微笑って俺の手をぎゅっと握った後、そっと離した。それから、もう、定番になった、あの仕草をした。俺の頭を撫でるように、ぽん、と叩く、あれだった。俺は、それが、堪らなく好きになっていた。  ホテルの浴室に入った瞬間、思わず口から零れていた。 「どうしよう……」  本当に、どうしよう、と思う。ミツキさんの意に沿わないセックスになったらどうしよう、と言う思いと、本当にどうしよう、と言う思いがあった。俺は、セックスには、本当に自信が無かった。と言うよりも、今まで、相手を満足させてあげられた事が無かった。だって、俺は、本当は、タチじゃない。だけど、ネコにも成り切れない、中途半端な存在だ。  実は、ネコには一度だけ、挑戦した事があった。だけど、俺みたいな体格の良い男を相手にしてくれるのは、俺と同じくらい体格の良い男しか居なくて。圧し掛かられて、俺は、余りの恐怖に逃げ出してしまったのだ。それ以来、相手はネコの子、と決めて探していた。そうすれば、怖くない、可愛い子だけを相手にしていられたから。  タチにも、挑戦はしてみた。だけど、どうしても、相手を傷付けたらどうしようと、失敗したらどうしようと、不安になって、その時になると、情けない事に、俺の息子は役に立たなくなってしまうのだ。  だから、俺のセックスはバニラセックス止まりになるしか無くて。バニラセックスで、ミツキさんは、満足してくれるだろうか。いや、もしかしたら、ミツキさん相手なら、何とかなるかもしれない。そうだ、何とか、するしかない。ミツキさんにだけは、呆れられたくも、飽きられたくも、嫌われたくも無かったから。  俺は、念入りに身体を洗うとバスローブを身にまとって、浴室を出た。 「あの、シャワー、終わりました、けど……」  それでも、どうしても、情けない事に、俺の動きは消極的になった。浴室のドアに張り付くみたいになってしまう。ミツキさんは、ベッドの上でニュースを見ていたみたいで、テレビの電源を切ると、さっと立ち上がった。ストールも上着も脱いでいて、薄着のミツキさんは、俺とは違って、潔く浴室へと向かう。 「そう、じゃあ、僕も入って来よう。適当に過ごしてて」  ぽん、とミツキさんに頭を撫でるように叩かれて、俺は、漸く肩の力を抜く事が出来た。改めて、部屋を眺め遣って、俺は、ほえ、と間抜けな声を上げる。 「こんな、すごい部屋、初めて来た。お金、足りるかなあ」  部屋は、俺が今まで来た事も無いような部屋だった。多分、これ、ジュニアスイートルームって言うんじゃないだろうか。今まで俺が使って来た部屋は、普通の、シティホテルか、ゲイでも大丈夫なラブホテルだったから、こんな広い部屋を利用するのは、初めてだった。ミツキさんが選んだのだが、支払いはどうするんだろう、と不安になる。ああ、カード払いにすれば良いのか。その事実に気付いて、ほっ、とした俺は、鏡台に備え付けの椅子に座って、館内の案内に、何となく目を通していた。 「適当に過ごしてて、とは言ったけど、本当に、真面目だね、ナオは」  髪を拭きながら、ミツキさんが浴室から出て来る。バスローブ姿のミツキさんは、何と言うか、とても、セクシーだった。どきり、と胸が跳ねる。 「あ、えっと、お帰りなさい」  思わず、口からは言葉が漏れていた。って、俺、何言ってんの!? 緊張し過ぎだ!! 「……ただいま」  ミツキさんは、一瞬、俺をじっと見た後、ふわり、と微笑ってそう言ってくれた。ミツキさんの優しさに泣きたくなる。ミツキさんは長い脚を繰って、そのままベッドへと腰掛けた。 「ナオ、ほら、こっち来て」 「はいっ!」  手招きされて、ぎくしゃくしながら、俺は、ミツキさんの近くに寄る。緊張が丸分かりの俺の動きを見ていただろうミツキさんは、特に何かを言うでも無く、俺の半乾きの短い髪をくしゃくしゃと撫で回した。動悸はまだまだ酷かったけど、ちょっとだけ緊張は抜けて、思わず、口元が緩んでしまう。 「とりあえず、気持ち良い事、しようか?」 「はいっ!」  にっこりと微笑い掛けられて、俺は大きく頷いた。すると、ミツキさんの顔が近付いて来る。慌てて俺が目をつぶると、ふわ、と唇に柔らかい感触が当たった。ああ、ミツキさんの唇だ。柔らかくて、何でか、良い匂いのする唇だった。キスは、数回で終わってしまって、俺が追い縋るように顔を寄せると、両頬を両手で掴まれる。ミツキさんの手は、やっぱり、ちょっと大きい。 「横になる? 座ったままの方が好き?」  思わぬ事を聞かれた。前戯は、普通、横になってする物じゃないんだろうか。俺は、いつも、失敗しないだろうか、と緊張しながら相手を押し倒していたのだが。ミツキさんは、どっちでする方が良いんだろう? 「あ、えっと、ミツキさんの好きな方で」 「ナオは、どっちが好きなの?」  どっちが好き、と言うより、俺は、横になってした事しか無かったから、困ってしまう。ミツキさんは、どれだけ経験があるんだろう、なんて、馬鹿みたいな事も考えてしまう。 「えっと、横になってする方が、好き、です」  苦し紛れに言うと、ミツキさんは俺の左右の頬に唇を当てながら、小さく微笑った。くすぐったくて、俺も、小さく微笑ってしまう。 「良いね。じゃ、横になろっか。ほら、そんな隅に居ないで、こっちにおいで」  どきん、と胸が跳ねる。お姫様のような人の口から、王子様のような言葉が出て、俺はすごく混乱した。どぎまぎしながら、大きなベッドの真ん中に、にじり寄る。ミツキさんは、ぽふん、と音を立てて本当に横になった。俺を道連れにして。益々、俺は混乱してしまった。え、え、と思いながら、ミツキさんを見ると、もう一度、優しく頬を撫でられる。 「胸は、感じる方?」 「えっ!?」 「感じ難い?」  正直、胸は感じる方だ。自分でする時も、時折、弄ってしまうくらいには。けれど、この場面で聞かれるとは思わなかった。不安が胸を支配する。俺は、もしかして、今まで、普通のセックスをして来なかったんだろうか? そもそも、普通のセックスって、どんな物を言うのだろう? 「い、いえっ! あ、あの、でも……」 「触りっこしようか。僕も胸は割と感じる方なんだ」 「え、あ、はい……」  ミツキさんに言われて、俺は目を見張るしか無かった。触りっこ。お互いに、触り合う。そんな前戯も、ありで良いんだ。目から鱗だった。でも、触られて、大丈夫だろうか? しかも、ミツキさんに、だ。大好きな、ミツキさんに、触られて、俺はどうなっちゃうんだろう? 「これ、気持ち良い?」  ミツキさんは、俺の頬からゆっくりと首筋を伝って、バスローブの胸元を拡げると、そっと、本当にそっと、胸に触れて来た。それだけだと言うのに、俺は、すごく感じてしまって。 「うん、あっ、ふっ、」  必死に声を噛み殺す。俺が、こんな声を出しても、気持ち悪いだけだ、と思ったから。なのに。 「声、我慢しないで良いよ。気持ち良いでしょう? 僕も気持ち良いと、声出ちゃうしね」 「あっ、いや、でも……ああ、ぅん……」  優しく言われて、必死に噛み殺していた筈の声が、漏れてしまった。ミツキさんの指先は、本当に、優しく優しく、でも、的確に俺の気持ち良い所をなぞって行く。触られる、ってこんなに気持ち良いんだ、と思った。俺も、こんなに、相手を気持ち良くしてあげられていたのだろうか? 「良いね。こら、休んでないで、僕の胸も触って」  ミツキさんが俺の手を取って、自分の胸に導く。バスローブの合わせ目から手を差し入れて、俺もミツキさんの胸を触ってみる。途端、びく、と手が震えてしまった。だって、ミツキさんの胸は、柔らかかったから。気持ち良さに閉じていた目を急いで押し開くと、ミツキさんの身体をまじまじと見てしまう。目に入れたミツキさんの身体は、何て言うか、すごかった。とても、鍛えられていて。顔や雰囲気の可憐さからは、ちょっと予想外過ぎる身体をしていた。そのまま腹筋まで見て、綺麗に割れたそれにも驚いてしまう。 「ふふ。ナオのえっち」 「あ、す、すみませんっ」 「良いよ。僕も、ナオの事、ちゃんと見たいしね。電気は、そのままで良い?」  本当に、自然に聞かれて、ああ、こんな風に聞けば良いんだ、と思った。俺は、いつも、始める前に勝手に自分で調整してしまっていた事を反省した。 「は、はい……あ、でも、少し暗くして貰えると……」 「うん、じゃあ、ちょっと落とそう。このくらいかな?」 「はい……」  薄っすらとミツキさんが見えるくらいの暗さで、すごく安心出来る。ふふ、とミツキさんが微笑う。俺も、何となく、微笑っていた。 「じゃ、続き、しよっか?」 「はい」  優しく、でも、今度は、しっかりとミツキさんが俺の胸に触れて来る。俺も、ミツキさんの鍛えられた、今は柔らかい胸に、同じように触れてみた。 「んっ、気持ち良い……もっと、そっと触って……そう、うん、気持ち良いよ、上手だ……」 「んっ、ふっ、あっ、……ひゃうっ……」  必死に、ミツキさんの手付きを真似しようと思うのだけれど、ミツキさんの手が気持ち良過ぎて、疎かになって来る。口からは、引っ切り無しに声が漏れていた。 「気持ち、良いね。もっと、気持ち、良くなろうか?」  ミツキさんにそんな事を言われて、俺は、こくこく、と頷くしか出来なくて。息を吸ったり吐いたりして、何とか快感を逃しながら、ミツキさんを見ると、そこには、いつもより、ずっと、ずっと、すさまじい色香をまとったミツキさんが居た。ぞわぞわ、と背筋を快感が走る。ミツキさんも、気持ち良いと、感じてくれているんだろうか、と思った。そう感じてくれていると、嬉しいな、と思った。  ミツキさんの手が、ゆっくりと俺の身体の線を降りて行く。本当に、焦れる程の速度で触れられて、こんなにゆっくりする事が、こんなに官能を刺激されるなんて事を初めて知った。俺が、今までして来た前戯とは、本当に、違っていて、余りに気持ち良くて。不意に、ミツキさんの指が、優しく俺のペニスに触れる。それだけで。 「ナオ、もう、イきそう?」 「あっ、はっ、はっ、ふあっ、あっ」  早漏、と言われても仕方無いくらい、俺のペニスは、もう限界だった。 「ふふ、可愛いね。ナオは、本当に感じ易いんだね。良いよ、イってごらん」 「ああああっっ!!」  耳元で優しくそんな事を言われて、竿を上下に扱かれたら、もう、我慢なんて出来なかった。あっと言う間に上りつめてしまう。 「沢山出たね。うーん、若いからかな、濃いね~」  はあはあ、と息を吐き出す俺を嗤ったりせずに、ミツキさんは、俺の精液で濡れた手を光に翳すなんて事をした後、手早くティッシュペーパーで拭いていた。ティッシュペーパー、いつの間に近付けていたんだろう? 全然、気付かなかった。  俺の息が整うまで、ミツキさんは俺の髪を弄ったり、耳に触れたり、頬をなぞったりしてくれた。それも、気持ち良くて、そして、心地好かった。 「じゃあ、僕も、イかせてくれる? ナオの手で」  聞かれて、俺は、勢いよく頷いた。それから、恐る恐る口を開く。 「あ、はい……あの、良ければ、口で……」 「フェラチオ、してくれるの? 嬉しいな。じゃあ、お願いしちゃおうかな」  俺は、ミツキさんを倣って、ゆっくりゆっくりミツキさんの身体を手と唇とで触れながら、ペニスへと顔を下ろして行った。ミツキさんのペニスは、何と言うか、予想外に、とても立派だった。亀頭がしっかり出ていて、俺の半被りとは全く違っていた。それに、太かった。長さは、多分、俺のペニスと一緒ぐらいだと思うけど。これ、いわゆる、巨根、と言われる物なのでは? ごくん、と唾を飲む。言った手前、やらねば、と思うが、ちょっとだけ勇気が必要だった。もう一度、ごくん、と唾を飲んで、先ずは亀頭に舌を這わせる。 「ん、む、んむっ、ふっ……」  先走りが、口の中に絡んで唾と合わさって、滑りが良くなるのが分かって、俺は、思い切って亀頭を咥えてみた。あ、やっぱり、大きい。顎が、きつい。 「ん、ナオ、上手だね。でも、出来れば、もう少し舌を使ってくれると、もっと気持ち良いかな」  言われながら、髪を梳かれる感じがする。それが心地好くて、俺は、必死になって舌を動かした。 「良い、ね。上手。ああ、気持ち良い……」  頬の裏側や口蓋で、亀頭や竿を刺激する。残念ながら、全部を咥え込む事は、出来なかった。それでも、喉の奥に何とか入れられる所まで入れる。正直に言うと、俺自身も、それをする事で、すごく感じてしまっていた。今までも、そうだったけど、ミツキさんのペニスを咥えている、と思うと余計にだった。 「ナオ、出るから、口離して……」  唐突に、そう言われて、顔を引かれる。ぼろん、と口からミツキさんのペニスが飛び出した。俺は、焦ってしまう。 「えっ、あっ、あの、気持ち良く、無かったですか?」 「気持ち良いから駄目なんでしょう。射精して、万が一、目に入ったら大問題になるし、そもそも、こんな不味いモノ、飲む方がどうかしているでしょ」 「は、はあ……」  諭すように言われたけど、納得は行かなかった。正直、俺は、ミツキさんのだったら、喜んで飲みたいくらいだった。確かに不味いけど、それでも、飲みたい、って言う気持ちの方が強かったのに。口の中に残っていたミツキさんの先走りを、ごくん、と飲み込む。ミツキさんのは、こんな味なんだな、と思った。やっぱり、飲んでみたかった。 「でも、手ではイかせてくれる?」 「あ、はい!」  言われて、即、頷くと、ミツキさんは、嬉しそうに微笑ってくれた。  立派に育ったミツキさんのペニスを両手で捧げ持って、上下に手を動かす。びくんびくん、と手の中でより育っていくペニスが、とにかく、愛おしくて堪らなかった。 「はあ、イくっ、んっっ!!」  暫く擦っていたら、ミツキさんは、色っぽい声を上げて、吐精した。ミツキさんの絶頂する姿は、壮絶に、艶っぽかった。

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