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第七夜

    * * *  レイが死にかけた子供を拾ったのは、十二年前の夜だった。  バケモノになってからは隠れるように森の奥で暮らしていたが、時折孤独に耐えきれず、胸をかきむしりたくなる夜があった。  人肌が恋しい。誰かと言葉を交わしたい。 そんな欲求から、年に一度やってくるハロウィンの夜だけは、街に降りるようになった。 仮装をした人たちに紛れれば、レイの外見を訝しく思う者はいない。  あれは一夜の夢の後、森へと引き返す帰路での出来事だった。  レイはその日、ハロウィン祭で振る舞われたバーンブラックという菓子を初めて口にした。頬張ると生地の中から指輪が現れ、目を丸くした。 隠されたモチーフで運命を占う食べ物らしい。  安物の指輪はレイの小指に収まった。 婚姻を意味する縁起物だからお守りにどうぞ、と言われたのだ。 長い間独りきりで過ごしてきたレイにとって、それは大切な想い出の品になった。

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