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第九夜
捨て子の回復力には目を見張るものがあった。
衰弱しきっていた体は、三日もすれば駆け回れるほど元気になり、痛々しかった全身の傷もきれいに消えた。
しかし醜いバケモノの存在がよほど恐ろしかったのだろう。
しばらくの間、彼はレイから逃げるように物陰に隠れ、息をひそめていた。
時にはベッド、時にはカーテンの裏、家の外へ飛び出したままなかなか戻らないこともあった。
けれど何度逃亡を計っても、行き場のない彼はこの家に戻ってくる。
そしてレイが用意しておいた食事を、知らぬ間に完食しているのだ。
(まったく、バケモノの私を恐れているくせに、私が出した食事を口にするなんて……)
疑うことを知らない幼さがほほ笑ましい。
毒を盛った濡れ衣で裁かれた過去が洗われるようだった。
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