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第十一夜

(あの子が膝の上で寝ている……!)  正確には頬だけ膝に乗せている状態だが。 一体何が起こっているのだろう。 おそるおそる柔らかな耳毛に触れると、ぷくぷくしたほっぺたがへにゃりと笑んだ。  おおよそ百年ぶりの人肌に震え、レイの目頭が熱くなる。 まるで人間に戻ったような気がして、慌てて首を振った。 そのわずかな振動で目覚めたチビ狼が、レイを見て凍りつく。  「しまった」と思ったが、彼の方が何倍も「しまった」という顔をしていた。 刺激しないよう、耳に触れていた指をそっと遠ざける。 「一緒に昼寝してくれたんだな。ありがとう」  彼はまんまるな目をさらにまんまるにしてレイを凝視した。 そして中途半端に浮いたてのひらとレイの顔を交互に見た後、まぶたを閉じ、ゆっくりと頭を押しつけてきたのだ。  触れることを許された瞬間の感動は筆舌に尽くしがたい。 なでなでを要求されればひとたまりもなく、この子の望むものならどんなものでも与えてやろうと思った。

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