17 / 25

第十七夜

 ハロウィンの今夜は、松明の炎があちこちで揺れている。 惨事を招く前にやめさせなければと一歩踏み出したそのとき、興奮した男が大きなランタンを抱え上げ、広場の中央へと放り投げた。 反射的にレイは地面を蹴る。  ランタンが大きな松明の足を破壊してぐらりと傾いた。 後ろに並んでいる別の松明を巻き込んだ先に、ジャックとエマがいる。 背を向けた二人が異変に気づいて顔を上げた。  ドミノ倒しになった炎の間に、レイが勢いよく滑り込む。 二人は衝撃を受けて突き飛ばされた。 燃え盛る炎はレイの上に覆いかぶさり、こぼれた火が祭りの装飾に引火して広がってゆく。 「レイっ!」  焦って駆け寄ろうとしたジャックをレイが制した。 「来るな!」  本能を無視して火に立ち向かおうとするなんて、バカな獣だ。  崩れた松明の下敷きになったレイに、油を吸った布が張りついて、服も髪も焼き焦がしていく。 けれど、どうせ死ねない。

ともだちにシェアしよう!