19 / 25

第十九夜

 誰かが「バケモノ!」と叫んだ。 「おまえがやったんだな! この人殺し!」と口々に罵声を浴びせる。 沈黙を貫くレイに、次々と石が投げつけられた。 「やめろ!」  思わず飛び出したジャックに、「どうしてかばう! おまえもバケモノの仲間か!」と怒りの矛先が向けられ、レイはありったけの力でジャックを突き飛ばした。 「こんな人間と仲間なものか!」  飛んでくる(つぶて)からジャックをかばい、地面に倒れこんだ彼の頭上に手をかざす。 黒いもやが表皮からはみ出し、ジャックの体内に潜りこんだ。 十二年前に注いだ狼の涙を引き抜いた瞬間、獣の証は灰に変わり、パラパラと地面に降り注いだ。 (もう帰ってくるな……)  誰にも聞こえないよう小さく告げ、レイは身を翻す。 別れ際に見たジャックの顔が目に焼きついて離れなかった。

ともだちにシェアしよう!