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第十九夜
誰かが「バケモノ!」と叫んだ。
「おまえがやったんだな! この人殺し!」と口々に罵声を浴びせる。
沈黙を貫くレイに、次々と石が投げつけられた。
「やめろ!」
思わず飛び出したジャックに、「どうしてかばう! おまえもバケモノの仲間か!」と怒りの矛先が向けられ、レイはありったけの力でジャックを突き飛ばした。
「こんな人間と仲間なものか!」
飛んでくる礫 からジャックをかばい、地面に倒れこんだ彼の頭上に手をかざす。
黒いもやが表皮からはみ出し、ジャックの体内に潜りこんだ。
十二年前に注いだ狼の涙を引き抜いた瞬間、獣の証は灰に変わり、パラパラと地面に降り注いだ。
(もう帰ってくるな……)
誰にも聞こえないよう小さく告げ、レイは身を翻す。
別れ際に見たジャックの顔が目に焼きついて離れなかった。
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