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第3話
「眠っ。あー。いかん、寝そう」
武典があくびをすると、くっきりとした二重まぶたの輪郭が緩んだ。
「俺もやばいわ。しかし今寝たら死ぬぞ、きっと」
「小便したくなってきた」
武典は立ちあがろうとしたようだが、足がもつれて地面に尻もちをつく。
「あれ? おれのちんこ、勃起してら」
きょとんとする武典を見て、翔は上体をふらつかせながら笑った。
「さっさと小便しろ、ばーか」
外灯がじじっと鳴る。顔を真っ赤にしたふたりは、並んで地面に寝転がった。
「漏らすぞ、おまえ」
翔がまぶたを閉じながら言った。
「寝小便してやる」
おぼつかない声で、武典は言葉を返した。
数分待たぬうちに、彼らは寝息を立てた。映像はそこで止まり、少年が再びリモコンを操作する。
「わかったかの? おぬしらの阿呆な具合が」
少年は、現在の彼ららしき姿をテレビに映した。
武典の顔が、驚いたように歪む。
「ちょ、え? いまどきブラウン管かよ」
「しっ。馬鹿。言うな。たぶん液晶を買う金もねぇんだろ」
気の毒だと言わんばかりに、翔は首を振った。
「そこ!? 今になってそこに食いつくんか!? ぐぅぅ、支給品だもんで仕方がないじゃろが」
唸りながら、少年は言葉を続ける。
「ほれ、雪が降ってきたぞ。このままだと凍死間違いないのぉ」
少年の言うとおり、テレビに映ったふたりの上へ、粉雪が降ってきている。寒いのか、そこにいる翔は無意識な感じで、武典へすり寄った。
「おまえの見る夢は悪趣味だな」
「翔のだろ。俺を悲惨な目に遭わせる夢なんて見るなよ」
少年はちゃぶ台の前から立ちあがり、ふたりのもとへすっ、と移動した。
「うわっ、歩けてめぇ! 何のためについてる足だ!」
武典が驚いたように身を仰け反らせた。
「ちょっと、怖くなってきたんだけど。俺……ホラー苦手なんだよな」
武典の背後に、翔はささっと隠れる。
「誰がホラーじゃい」
軽いため息をつき、少年は胸の前で腕を組む。
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