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第4話
「これは夢ではないぞ。ここは、あの世とこの世をつなぐ門みたいなもんでなぁ」
「門みたいな、門!?」
武典が叫んだ。
「どっちだよ! 門なのか!? 門みたいな門!?」
武典の肩から顔をひょこりと出し、翔も叫んだ。
「ひとまず、おぬしら、ここでセックスして」
少年はしれっと言った。
「正気かこいつ。なぁ、やべぇよ武典」
「いや、単なる変態なんだろ。この若さでそれに目覚めるとは……」
武典は少年に向かって両手を合わせ、低い声で言葉を続ける。
「安らかに眠れ」
「このままじゃと、おぬしらがその立場なんじゃけど」
少年は呆れ果てたように言うと、黙っているふたりに対して眉をひそめた。
「あのな、わしとしては別に、おぬしらが死のうが、死ぬまいがどっちでもいいんじゃよ。しかしチャンスを与えろって、上からの指令があってのぉ。ああ、給料に見合わぬ労働」
少年はまぶたをぐわっ、と大きく見開く。
「知ってる? 天使の給料知ってる? 福利厚生もつかない、残業手当なんて幻。のぉ、わしが今日どんな食事をとったか知ってる? チョコ一粒じゃよ、一粒!!」
「知るわけないし。家庭菜園でもすりゃあいいじゃん?」
歯軋りをする少年に向けて、翔が呟いた。
「家庭菜園の準備金すら、ないの!!」
「え、じゃあどっかのヒモにでもなれば?」
武典が提案した。
「そんな金持ちと出会える機会があるとでも!?」
「翔。おまえの見る夢って、なかなか面白いな」
「これ武典の夢だろ? さすが、個性的だわ」
顔を見合わせるふたりへ、少年は人差し指を立てる。
「一時間じゃ。一時間以内に、おぬしらここでセックスしなされ」
「あのさ、さっきからセックスセックス言うけど、俺らが男同士だってわかって言ってる?」
武典は肩を竦めた。
「ケツマンにチンポコをハメればいいだけじゃろうが!!」
少年がその場で地団太を踏む。
「お、おお。天使らしからぬ天使だ」
呆れたような声で、翔が言った。
「下品な奴だ。俺らですらケツマンなんて言わねー。しかもちんぽに、こ、をつけて可愛いふりかぁ?」
「おぬしら、ゲイじゃろ。同性愛者。だからふたりともここに連れてきたっていうのに」
脱力したかのように、少年がため息をつく。
「はぁ、そうですが、ああああっ!?」
武典は雷に打たれたような表情を浮かべ、翔を指差した。
「えっ、おまえそうなん!?」
翔もまぶたを見開き、武典を指差す。
「おまえも!? マジでぇ!?」
「ちょっ、俺さぁ、前から翔のこといいなって思ってたんだ」
「俺も、俺も! 気が合うしさ。おまえといると楽しいんだもん。付き合う? 付き合っちゃう??」
「付き合っちゃう!」
武典は翔に向かって手を挙げる。
すかさず翔が、彼の手にハイタッチした。
「いええぇぇぃ!!」
「ってことで、さっさとハメんかい」
少年が指をぱちんと鳴らしたら、木の椅子が唐突に現れる。そこへ座ると、彼は足を組んで膝の上に肘を置き、頰づえをついた。
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