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第6話
「マジ?」
布団を眺めながら、翔は呟いた。
「どうするよ、翔」
「じゃんけん?」
「いいや、そんなんじゃあ、俺のケツ処女は捧げられん」
武典は首を振る。
「どうやって決めるよ。あ、柔道?」
翔が、ひらめいた、といわんばかりの顔をした。
「サークルで培った技で勝負か。よし、いいぞ」
「ほんなら柔道着を着せてやろうかの」
少年の目がぎらりと光った。そこから放たれた光線が、ふたりの身体を包み込む。
「ぎゃあぁっ!?」
武典が鋭い声で叫んだ。
「うほぁっ!?」
翔も同じく叫んだ。
ふたりは床に崩れ落ち、転げ回っていたが、光がやむと双方きょとん、とした顔をして立ちあがった。
「あれ? てっきりレーザービームで死んだかと思ったのに」
武典は自らの服装が柔道着となったことを確認するかのよう、腰に巻かれた白い帯を指で弄っている。
「全然痛くなかったなぁ。はは、あーびびった」
と、翔は言い、襟元をぱしり、と引っ張った。
「さっさと勝敗を決めるために、場外はなしじゃ。わしが審判でいいんじゃろ?」
少年はどことなく、うきうきした様子だ。
「ま、いいけど。布団が邪魔になるから、ちょっと移動しようぜ」
武典の意見に、皆が頷く。
数メートル場所を移し、武典と翔は真剣な表情を浮かべながら、互いの正面に立った。
「そういえばあんた、柔道のルール知ってるん?」
翔は少年に尋ねた。
「そら、知っとるわい。わし日本人じゃったし、国技を知らんわけがなかろうて」
少年は華奢な胸を張っている。
「日本人だった? 今はなに人なんだ?」
武典が不思議そうな顔をした。
「髪色からして外国人には間違いないな。でもさ、武典。ランドセルって、海外でも使ってたっけ?」
「いいからさっさとやらんか!」
少年は怒鳴り、手を挙げる。
「はい! 始めっ!」
武典と翔は、途端に睨み合う。両者わずかに腰を落とし、じりじりと間合いをはかった。
「さあ始まりました。ケツマン争奪戦! 両者、睨み合いが続いております」
マイクを持つように、少年が手を丸める。
「おい、やめろ。実況やめろ」
武典がうんざりしたような表情を浮かべる。
「ケツマン言うな。やめろ。マジで脱力するし」
ため息をつく翔だが、激しくなってゆく組み手争いに、次第と真剣な面持ちになる。
「何じゃい。盛りあげようと思ったのに」
ぶつくさ言いながら、少年は唇を尖らせた。
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