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第10話

 額に滲む汗を腕で拭いながら、翔も少年に顔を向けた。 「っ、ふぅ、いいオカズだったわい」  少年はスボンのファスナーを下げ、そこから幼い肉杭を出していた。床には白濁が飛び散っていて、鈴口にもそれがわずかに残っている。  翔は武典の中からすぐさま肉杭を抜いて、腰を抜かしたようにその場へ尻をつく。 「うわっ、うわぁっ、変態だ! やっぱ変態だった!!」 「てめっ、いきなり抜くな!」  武典は仰向けで股を広げた体勢のまま、尻を手で押さえている。 「ううっ、ローションを寄こすなら、スキンもくれよな。垂れてきそう」 「だって、俺らのセックス見ながらこいつ、シコってやがったんだぞ!?」 「だからってさぁ」  ぶつくさ言いながら、武典は上体を起こし、話を続けた。 「で、変態天使さんよぉ。さっさと俺らを戻してくれるんだろうな?」 「約束じゃからな。さぁて」  着衣を正すと、少年は武典に向かって指を差す。どちらにしようかな、とふたりを交互に指差し、武典で指を止めた。 「はい、おぬしで決定。おめでとう!」  武典は首をかしげた。 「何がだ」 「生き返るの。武典くんで決定じゃ」  少年がぱちぱちと拍手する。 「は? はぁぁぁ!?」  と、叫びながら武典は立ちあがった。一瞬ぐっ、と痛みを堪えるような顔をする。 「ふざけてんのか、てめぇ!」 「え、だってわし、愛し合えたら命を救うって言ったじゃろ? 両方の、とは言ってないからの」 「片方の、とも言ってねぇだろうが!」  武典の形相が鬼と化した。 「おい、翔も何とか言えよ!! へたり込んでんじゃあねぇ!」  声をかけられ、翔は閉ざしていた口を開いた。 「な、んか色々、急展開すぎて、ついていけないんだけど」 「ついてこい! おまえのことだぞ!!」  翔の肩を、武典が激しく揺さぶる。 「はは、でも、うん。俺でよかったわ」  翔は淡い笑みを浮かべた。 「何が? 何がよかったってんだ、おまえ!」  翔の瞳に、涙がぶわりと浮かぶ。 「だってさ、俺……俺……。おまえを抱けるって思わなかった。一年前くらいからさ、好きだったんだよね。一日、一日って月日が経つたびに、好きな気持ちが膨れあがって、つらくてな。おまえ、ノンケだと思ってたからさ。この気持ちは消さないとって……」  涙をぼたぼたとこぼしながら、翔は言葉を続ける。 「ずっと、思ってた。苦しかったんだ。ふとした拍子に、好きだって言いそうになる。つい言っちまったときに、ダチとして、って付け加えるのもつらかった。でも、そんなだったのにさぁ。こ、こんなふうに、おまえを抱ける、なんて。愛し合えるなんて、俺はもう、どうなってもいいって思った。どうなってもいいって……っ」  顔をくしゃくしゃに顰め、武典は翔の前に跪いた。翔を胸に深く抱きしめる。 「馬鹿野郎。馬鹿だろてめぇ。翔……っ、俺も同じだっていうのに畜生。何、勝手に諦めてんだ。何言ってんだてめぇ!!」  彼の涙腺も決壊していた。

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