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第47話 青は、気持ちイイ
自分から言っちゃったよ。
「うん」
でも、青は素直に返事をして、嬉しそうに笑いながら、俺にキスをした。そして、もう半裸だった俺の浴衣に触れる。
「帯解くの手伝って、みつ」
着物に馴れてる俺と違って、いつもは器用で料理もラッピングもできちゃう青の指先が不器用にしか動かないのが面白かった。青の長い指先が困ったように、帯のところでウロウロしてて、迷子になってる。「ここを、こうして、ほら」なんて言いながら、迷子になってる青の指を捕まえて、じゃれるように絡まって、手を繋いで、帯を解いてくのは、なんかすごく楽しかった。
するりと肩から滑り落ちる浴衣。むき出しになった素肌。
めちゃくちゃ恥ずかしいけど。
「みつ、キス」
でも、青も同じ裸になって、照れて頬を赤くしてたから、平気。
「ン、んんっ……んふっ」
キスしながら、死角で青の手が何かをしてる。でもよく見えない青の手が動いていると、なんとなく気がつけただけ。何してんだろって、単純に疑問に思って、キスしながら視線をそっちに向けた。
「みつ、あんま、見ないように」
「ぇ? 青?」
「ゴム、つけてるから」
「あ」
そっか。そうだよな。するんだったら、ゴムするもんな。エッチ、するんだったら――そう考えて、その単語に行き着いた瞬間、ボンッ! って、音がしそうなくらいに顔が熱くなった。
「みつ……」
これから、青と繋がるんだ。
「息、止めないで」
「ん、わかった」
青と。
「痛かったら、言って、すぐにやめるから」
「青、ンァっ!」
声出ちゃった。変な声。ただ、これからすることのためにって、さっきまで指でしてくれてた孔のとこにローションを垂らされただけなのに、まるで、今の声って。
「みつ?」
「あンっ、ごめ、声……」
「ううん。大丈夫?」
「平気、きっと、痛くない」
痛くないと思う。だって、孔の口んとこに、くぷって、また挿し込まれた指に上がった声はまるで気持ち良さそうだった。驚いた時に上げる声なんかじゃなかった。
「みつ……」
「あっ」
指とは違う太さのものが、そこに押し込まれる。ローションのぬめりでその太さにちゃんと広がるけど、でも、すごい質量で、圧迫感で、俺の中がいっぱいになる。
「み、つ」
「はっ、はァっ、んくっ……はァっ」
息をしたくても、空気を吸い込める余裕もないくらい、中が青で埋まってく。
「みつっ、息、止めないで、みつ」
「はぁっ! ンっ」
違うんだ。呼吸したくても、呼吸して吸い込んだ空気が喉より奥まで届かない。ちゃんと吸えない。胸に入って、いかない。どうしよう、これじゃ、青も気持ちよくない。きっとお互いに苦しい。
「みつ」
「んっ、ぁっ……はっ」
「みつ、中にいるの、俺だよ」
「ァ……お……」
背中を丸めて、俺に少しも体重がかからないように気をつけながら、前に倒れた青のチョコレート色の瞳がすぐそこにあった。俺がその瞳の中に映り込んでいるのが見てわかるほど近く。
「うん。俺」
キスが降ってくる。キャラメル色の髪がすだれみたいに俺の上にあって、青の瞳が俺を見つめてて、キスの雨が降ってくる。唇に、頬に、肩に、鎖骨に。肌にいくつも落ちてきて、すごく気持ちイイ。
「息、できる?」
「う、ん、青」
青がいた。目の前に、そして、俺の中に。ただ、それをちゃんと感じただけで、なんでこんなに変わるんだろう。息もできないくらい、あんなに苦しかったはずなのに、俺の中いっぱいに占領じゃなくて、独占しているのが、青なんだってわかったら、急に、変わった。息苦しい圧迫感が、愛しい存在感に変わった。
「あンっ」
青の大好きな甘いお菓子にも負けない甘い声が自分の口から零れて、ちょっとびっくりした。とても、とても気持ち良さそうな声だったから。
「動くよ」
俺の甘い声を聞いて、青がゆっくり、でも、たしかに動き出す。
「あっ、あっ……んあっ! 青っ、ァっ」
青が動く度にどうしても甘い声が零れた。すごく気持ち良さそうな声を出す度に、青が深く、浅く、俺の中で動いてくれる。
「あっ青っ……ン、ァっ、青っ」
好きな人を自分の中で感じるって、こんななんだ。
「みつ」
「あァ……ン、すご、ァ、深」
苦しいのに、嬉しい。身体の奥がすごい熱くて、溶けそうなくらいなのに、その中をもっと熱くて硬くて、力強い芯で射抜かれるのって、怖いくらいに、どうしよう、すごく、心地良い。
「あっ……ン、青っ」
「みつ、あんま、刺激しな、で。加減、できな、いっ」
くちゅ、ずちゅって、やらしい音が、青が動く度にする。青が俺の中を深く抉って、擦っていく度に濡れた音がする。繋がっているのが、気持ちイイってわかる音。
「しな、で、よ」
すごくカッコいい。眉をしかめて、いつもは柔らかく笑う唇からは乱れた呼吸と、たまに声を詰まらせた吐息。額に滲む汗も、発熱してるみたいに潤んだ瞳も、全部、俺のせいでそうなってるんだって思うだけで。
「っ、みつ」
たまらなく嬉しくて、気持ちイイ。
「加減……」
キャラメル色の髪が濡れててカッコよかった。水泳なんて授業でしかしたことないくせに、骨っぽい肩も、フライパンくらいしか握らないはずの文化部なのに筋肉質の腕も、全部、俺のもの。
「しないで」
ふわふわシフォンケーキみたいに甘くて優しい青が、俺とこうしてる時だけ、男っぽいなんて、ドキドキする。もっともっとして欲しくなる。今の青は食べたら止まらない、大人味のお菓子みたい。
「青、俺、ちゃんとっ、ンっ……んんん、ンン! ァっんっ」
ぐちゅっ、って音が激しくなった。覆い被さる青が俺の中をグンって深く射抜いて、貫きながら、耳元で囁かれた。「ホントに、加減できないよ」って。激しく突き上げられて上にずりあがりそうなくらいだから、ちゃんと返事ができなくて、何度も首を縦に振った。そして、返事の代わりに、俺からも青を受け入れたいんだって伝えるように、激しい律動を受け止めてみたくて、首にしがみついた。
「ン、んん、んふ」
奥が熱い。青の切っ先が突き上げる奥も、挿入されてる入り口も、濃く絡まり合う舌も全部熱い。ぎゅっとしたら、青の腕もぎゅっと俺を抱き締めて、そのまま、奥めがけて、熱の塊が中を掻き分けて押し込まれる。
「んんんんっ」
俺の中が、好きな人でいっぱいだ。
「あァァっ」
「ここ、好き?」
「わかっ、ない」
青の切っ先がどこかを抉って、その瞬間、電気が身体を駆け抜けた。びっくりして背中が反るほどの刺激。ビリビリして、突かれてるのは奥んとこなのに、なんで? 前の、とこ、先走りが溢れてく。
「でも、青、が、好き」
「みつ」
「あ、あああああっ! ァンっ、ァ、激しい」
おかしくなる。これ、気持ち良くておかしくなりそう。
「俺も、みつのことが、好き、だよ」
「ン、んんっァっ、あっン、ダメ、青、そんないっぺんに、したらっ」
青と、今してること全部が快感なのに、これ以上なんてもう無理だよ。今、繋がってるとこだけじゃなくて、さっき舐めて齧られた乳首にキスされて、口に含まれてフェラされたとこを握り締めて扱かれて、もう我慢できない。全部、全部、ジンジンと痺れるくらいに気持ちイイ。
「あ、っ青! イっ」
「みつ」
「あ、あ、あっ、あァっ…………っ!」
全身が青に染まっていく。そして、チョコレートよりも、キャラメルよりも、何より甘い青のキス。甘くて美味しいキスをされながら、青の手の中で達した俺は、青にも同じくらい気持ち良くなって欲しくて、きゅうって奥まで締め付けた。
「……み、つっ」
俺の中でドクドクと、ものすごく大きく脈打つ青に全身の力が抜けて、ふわりと浮いてしまいそうな感覚。不思議な無重力。そして、ようやく聞こえた花火の音。青でいっぱいだった俺は花火のことなんてすっかり忘れていた。窓の向こうで弾ける花火の閃光が欠片だけ見える。それが青の瞳の中にも映っていて。
「青、好きだよ」
とても綺麗で見惚れていた。
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