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第75話 我慢は身体に良くないです。

――キス、だけ、させて?  そう言われた。 「ん、ふっ……ん、ンンっ」  最初はぎゅっと抱き締め合った時にお互いの耳元で聞こえる声にドキドキして、笑いながら、触れるだけのキスをした。触れて、離れて、もう一回触れて、また離れる。 ――みつの唇、白玉みたいに柔らかい。  なんて言われて、ちょっと噛まれたら、ドキドキを通り越して、きゅっとお腹の底が重くて熱くて、たまらなくなった。  きっと、青もそう。  すごく苦しそうに眉をひそめて、喉仏が上下する。お腹の底んところから込み上げてくる熱を飲んで我慢、してる? と、思う。 「ん、ぁ……ぉ?」  そう、だよね? 「……」 「……あお?」  唇が離れる時に小さく、ちゅ、なんて音がした。久しぶりにこんなにたくさんキスしたからなのか、ただ唇の音がしただけなのに、俺も青も耳が、鼓膜が痛いと勘違いするくらい反応してしまう。鼓膜から喉奥がじわっと熱くなる感じ。 「青」 「……なんか、俺、おばあちゃんに嫌われてる、じゃん? あれって、洋菓子屋の息子ってだけじゃなくてさ。もしかしたら、気がついてるのかなって」  最近はそうでもないけれど、それでも不服そうな表情はずっとしてる、おばあちゃん。 「俺が、みつのこと、好きだって」 「……」  掃除も完璧にやってるし、一回だって四時起きに遅れたことがない。学校にいる青はどこかのんびりとしているけれど、厨房にいる青はしっかりしてて、いつだって真剣で、その横顔にいつも見惚れてしまうほど。それでもおばあちゃんはたしかにイヤそうな顔をするけれど。でもさ。 「青、あのさ……」  頬を、そっと、白玉みたいにツルツルしてる頬を両手で包み込んだら、なんか、すごく愛しくなった。 「俺も、青のこと好きなんだけど?」 「……」 「だから、おばあちゃんが気がつくとしたら、俺たちが好き同士って、ことだと思う」  好き同士で、ほら、島さんから言い渡された目玉商品の開発はとりあえず「あおみつ」で大丈夫そうだし、明日も四時起きだけれど、まだ、夕方だし。おばあちゃんは下で相撲観戦。うちの親はお店のほうで忙しいよ。 「だから、キスだけ、じゃなくてもいいと思う」 「……」 「んですけど」  キスだけじゃ、お腹の底んとこの熱くて重いのはずっと残ったままになっちゃうからさ。 「みつ、なんか、誘惑するの上手すぎない?」  そう文句を言った唇がまた白玉と間違えたみたいに俺の唇に噛みつくから、俺も、ぎゅっと抱き締めて、濃くて甘い、黒蜜みたいに蕩けるキスをしてみた。 「みつ……」  トロトロに蕩けそう。 「ン、青……も、ぉ」  お尻のとこ、熱くて蕩けそう。前もびしょ濡れで、胸んとこがジンジンして、全身おかしくなってるのかも。 「みつ、平気?」 「ン、ん……平気、青、は? へいき?」  何度も頷いて、熱くて仕方のないそこを差し出してしまいたくなる。 「平気じゃないよ。すっごい我慢してる。だから、久しぶりだから、痛かったら、言って?」 「ン……」  青の切っ先が熱くてたまらない箇所に触れただけで、お腹の底が急に熱を上昇させた気がする。  たぶん、これ、ちっとも痛くないよ。 「あっ……青のっ、来ちゃ、ぁっ……」  だってこんなにゾクゾクしてるんだから。 「み、つっ」 「ぁ、あぁぁぁっ、ン、んんっ」  一番太い切っ先で抉じ開けられたのに、苦しいとか、きついとかより、嬉しいって感じたんだから。 「ン、んんんっんンンンン! ん、ンふっ……ン」  青が俺の中に入ってくる。太くて硬くて、熱い塊がぐぐって押し込まれた、と思った次の瞬間、グンっ! って、ひと突きで挿し貫かれて、全身から熱が溢れるみたいに感じられる。 「ちょ、みつ!」 「?」 「もう、イっちゃいそうだったじゃん!」 「? んんんっ」  根元まで、青の全部が俺の中にある。キュンキュンと締め付けて、苦しいよりも気持ち良いがまさるから、声、我慢できないって思って、自分のシャツを口に咥えた。 「ホント、シャツ噛んで声我慢するとか、どこで、そういうの思いつくの? みつ、エロ可愛すぎ」 「んんっ!」  くちゅ、って響く蜜の音。覆い被さった青が俺の脇のところに手をついて、閉じ込められた気分になれた。すごく近くて深くて、ドキドキする。青のことを内側で感じるのに、ちゃんと目の前にいる。根元まで俺の中なのに、そこからクンって突かれて、また声が零れそうになる。 「みつ」  俺の中を掻き混ぜるように青が動き出したら、声出ちゃう。 「んんっ、んくっ……ン、ふっ」  でもシャツじゃなくて、もっと甘くて柔らかくて、美味しいそうなものが口を塞いでくれた。  青の唇。 「ン、ん、青っ、もっと、ぁ、気持ち、イイ」 「みつ」  うわ言みたいに俺のことを呼びながら、キュンキュン締め付ける内側を抉じ開け擦って、扱いて、熱の篭った溜め息を吐く青を見てた。のんびりしているのとも、真剣に和菓子を作ってるのとも違う。色っぽい顔、瞳、頬、それに――。 「ン、青、の唇」 「ど、しようね」 「?」  抱き合いながら、くちゅり、ずちゅりって、甘い蜜の音が響いてた。 「あおみつ、作りながら、俺、みつのキス思い出して、ニマニマしちゃいそう」  やらしくて甘くて美味しいお菓子みたいなセックスを――。 「うん。俺も」  ぎゅって抱き合って、まるで、クレープみたいに青に包み込まれるこの感じを思い出しちゃいそうだよ。

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