86 / 123

第86話 たくさん

 もうたくさんキスをした。 「みつ、なんか、今日のみつの唇、いつもよりプルプルしてる」  そんなことに気がついてしまうくらいたくさんキスした。 「あれかな、さっき、口紅塗ったから、……っン、青、食べるな、ン……ん」  味なんてしないのにペロリと舐められて、そのまま唇に吸いつかれてゾクゾクってする。快感に背中を撫でられるような感じがして、身体が跳ねてしまう。跳ねて、そして、自分の身体の内側で感じる青の指先を締め付けてしまう。ベッドの上、壁と青の間で、甘くてやらしい音を立てて、孔の中を掻き混ぜられてる。 「だって、みつが、俺の指、美味しそうに食べるんだもん」 「ン、んんっ……バカっ、ぁ、や……そこっ」 「気持ちイ?」  頷きながら首に腕を絡ませて引き寄せる。青の指、気持ちイイんだ。俺の中はこの指にいつもトロトロにされてしまう。すぐに気持ち良くなっちゃうようになってしまった粒んとこも、奥も入り口も全部、青の指がすごく好き。  骨っぽくて長い指に触れられたら、それが髪でも、肌でも、どこでも、火照って蕩けそう。だから、もう、我慢できないよ。 「青、お願い」 「平気?」  平気じゃないよ。全然平気じゃない。奥んところ、青のこと欲しくて、きゅうきゅう締め付けてきて、お腹の底のところが痛いくらいなんだ。痺れてしまう。腰がビリビリしてる。 「早く……」  俺の上で、青の喉仏が上下した。孔の口を指に馴染ませるように擦られながら、それを見上げただけで、欲しい気持ちがもっと膨らむ。 「あっ」  たくさんキスして、たくさんエッチしたのに、まだ、ドキドキするんだ。 「みつ、痛かったら、言って?」 「ん」  この瞬間。青が俺の中に入ってくる瞬間はいつも、心臓が破裂しそうなくらいに高鳴って、ドクドクって胸で暴れて。 「ちゃんと、言ってね。俺、今日」 「ん、んんんんっ」  全身丸ごと心臓みたいになる。そして、それを刺し貫かれる時、どうしても声が我慢できないから、キスで塞いでもらうと、全部で繋がれた気がして、すごく満たされた気持ちになれるんだ。  青の熱がゆっくり、俺を傷つけないようにゆっくり突き進んで、俺は中を抉じ開けてくる青に悦んでしがみついて、絡み付いて、隙間なくくっつく。舌同士を絡ませて、唾液が隙間から零れるのも気にせず、窒息しそうなディープキスをしながら、甘い音を立てて、全部で繋がる。  始めはゆっくり、そしてだんだんと激しく突かれて、擦られて、キスしながらじゃ溺れちゃいそうだから、途中、息継ぎするんだ。はぁっ、て深呼吸をする俺を見て、青が笑って額にキスをする。 でも、なんか、今日は――。 「あっ、んっ……んんっ、あっ、青? どうか、した? ん、ンンン」  息継ぎできない。奥めがけて何度も打ち込まれる杭に喘がされて、でも、その喘ぎも零す場所がないくらい、ずっと、キスしてる。溺れちゃいそうだ。 「あ、お?」 「俺、バカかも」 「? ンン、ン、んくっ……ん」  なんで? なんかあった? そう訊こうと思ったのに、また唇に噛みつかれて、ディープキスに言葉が途切れた。唾液も吐息も、全部、青に食べられてしまう。角度を変えて絡みつく舌と、繋がった場所を激しく貫かれて、打ち付けられて。 「あ、お?」  だから、ようやく解放された唇から零れた声が震えてた。 「見てみたかったけど、それって、女子に色々借りて変身するじゃん? この唇のプルプルだって」 「っぷ」  笑ったら、膨れっ面になった。頬をフグみたいに膨らませて拗ねてる。 「島さんにヤキモチなんて意味ないだろ」 「あるもん。島さん、みつのこと、めっちゃ好きじゃん」 「彼氏いるじゃん」 「そういう問題じゃないじゃん。それにリップさ、つまりは間接キスじゃん!」  はぁ、どうしよう。 「っ、みつ」  気持ち良くて、青のことがまたもっと好きになって、締め付けちゃったじゃないか。 「もう、青のバカ」 「み……」  キスをした。 「青以外で、俺の唇、触った人なんていないよ」 ――深見ってさ、けっこう独占欲強いよね。知らなかったけど。だから、はい。こうしとかないと。  あれきっととっても高い口紅だと思う。それなのに、先端んとこちょん切ってもらったんだぞ? 俺の唇に、たかがリップだろうが、青以外が触れたら絶対に怒るだろうからって、島さんが笑ってた。 「そ、そうなの? 切ったの?」 「うん。だから、間接キスもしてな、ぁ、あぁぁぁっン、ちょ、青、中で」 「だって! そんなの言われたら無理っ、もぉ! みつっ」  大きくなったっていうか、ビクンって、まるでイく時みたいに俺の中で跳ねるから、奥も粒んとこも全部刺激されて、今、ちょっとイきそうになったじゃないか。もぉ、って言いたいのはこっちだよ。 「あ、あぁっ……ン、青っ」 「みつ」 「全部、だよ」  繋がった場所からやらしい音がする。青が俺の中で気持ち良さそうに跳ねて暴れる度に、しゃぶりついて音を立ててる。触られてないのに、青のに突かれる度に揺れる俺の先端から溢れて零れて、激しく擦られる場所をトロトロにしてしまう。 「みつ? 何、が?」 「俺の全部、青しか、触ったことないよ、ぁっ……ちょ、あぁぁっン」 「みつ、俺、怒るよ」  トロトロなのに、激しく突いたりするから、声、我慢できないってば。青。 「怒ってるのに、笑ってる」 「そりゃ、ンむっ……っ」  声出ちゃうから、ちゃんとキスしてて欲しいんだ。青の唇しか触れられないんだから、しっかり塞いで声食べておいて。 「ン、青っ、あお……もっと」  ギュッと抱きついて、脚を大胆に広げて、青を奥深く、もうお互いに知っている一番気持ちイイ場所に擦り付けた。たくさんエッチしたのに、たくさんこうして繋がったのに、困るくらいに気持ちイイ。戸惑ってしまうくらいに、もっと青のことが好きになる。 「みつ、好きだよ」 「俺も、ぁ、お、のことっ」  壁と青に挟まれた俺はまるで、閉じ込められてるみたいだなって思った。誰にもあげないって感情に突き動かされるように、言葉が途切れるくらいに激しく奥を突かれて、気持ちイイ。 「青、好き」  ぎゅっと全身で抱き締めて、キスしながらそう囁いて、繋がって激しく擦られる熱もきゅっと締め付けて。 「あ、あ、あぁっ……ン、イくっ、青、キスして」 「みつ……」 「ン、んっんんんんんんん!」  たくさんキスしたのに、たくさんエッチしたのに、青のこともっと欲しくて、もっと独り占めしたくて。 「ン、青」  ほら、俺の中にある青のことをドクドク脈打つ内側でぎゅっと強く捕まえてる。

ともだちにシェアしよう!