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第101話 プレゼント交換

 ちょっと恥ずかしい。まさか、おばあちゃんに気を使われるなんてさ。もう、おばあちゃん、いつの間にスマホなんて使えるようになったんだろう。そういう電気製品あんまり好きじゃないのに。 ――今日はクリスマスなので、出かけてきます。留守番お願いします。  おばあちゃんからメール。改まった手紙みたいな言葉がくすぐったい。 「みつ……」 「ン」  ベッドの上にペタリと座って、青に近寄る。青も同じように近くへ来てくれて、唇が触れ合うととても温かかった。外、けっこう寒くて、身体の芯まで冷えてたのに。 「青の手、めちゃくちゃ冷たい」 「ごめっ」  冷え切った指先を引っ込めようとする手を掴んで引き寄せた。今日はずっとくすぐったくて仕方のない胸のところに持ってきて、体温が伝わるようにって、掌を重ねて心臓の上のとこに置く。 「青、メリークリスマス。って、明日がメインだけど。あ、そだ。学校の帰りにプレゼント」 「いらない」 「えー、でもさ」 「ずっと、欲しかったもの、もらえたから、何もいらないよ」  そして、額がこつんって、触れた。 「みつのこと、もらえたから」  体温のふり幅がすごくて眩暈がしそうだ。寒い外でイルミネーションとクリスマスツリーを見て冷え切ってたはずなのに、もう、今、胸のところがじんわりと熱くて、溶けてしまいそう。  クリスマス、恋人たちはデートして、ツリー見て、微笑みあって。家族で過ごす人たちはご馳走食べてプレゼント交換して、ケーキ食べて、俺たちの場合はおにぎり、だった。それで、FUKAMIのさ、たとえば、まだおじさんたちに話したわけじゃないけど、もし、もしも、今朝、おばさんが言ったことを俺の期待っていうか、願いっていうか、とにかく願望のままに受け取ったとしたら。FUKAMI のお嫁さんとしては、一年で一番忙しい日。それが、クリスマス。  すごい、俺たち、いろんなクリスマスを制覇できるんじゃ。 「でも、ひとつだけ、欲しいものがある、かな」 「え? 何? 教えてよ。明日、どこかで買えるもの?」 「……声」  恋人で、家族で、ケーキ屋さん、全部を味わえる、俺たちのクリスマス。 「……え?」 「みつの、可愛い声、聴きたい」  どんなケーキよりも甘いクリスマス。 「ん、ぁっ……やぁっ、ン、青っ」 「うん」 「青っ」  くちゅ、って蜂蜜を掻き混ぜるみたいに甘い音がする。青の指が入ってきた瞬間から、なんか内側が柔らかくなって、悦んで、指に吸い付いてる。きつく絞るみたいにくねる内側を掻き分けて広げられると、ダメなのに。今夜は制限がないから、ちょっと困るんだ。 「あぁぁぁっ! ン、青、そこっ」 「気持ちイイ? コリコリしてる」 「あ、も、言わなくていいってばっ、あっ、ひゃぁっンっ!」  ぐりっと押されて、腰が浮き上がる。きゅんきゅんって指を締め付けて、気持ちイイって伝えてしまう。  いつものくせで声を我慢しようと手で口元を押さえようとしたら捕まってしまった。掴まれて、そのまま指を絡ませて、恋人つなぎのまま、上から覆い被さる青のキスに翻弄されてる。蕩けてしまうのに、キスしながら、内側を擦られたら。 「やぁ……ぁあ、ン」 「みつの声、やばい。めちゃくちゃ、可愛い」 「知らなっ、ぁン、可愛く、ないっ」 「みつが、知らないだけだよ」  青こそ、知らないくせに。こんなにカッコよくて、青はわかってないんだ。初めて、青とした時よりもずっとカッコよくなって、色気まで出てきちゃって、俺がどれだけ、ヤキモチやきまくってるのか、独り占めしたくて焦って慌てて忙しいって。  青に見つめられると、いまだにドキドキして困るって、わかってない。 「青」  青のこと、ものすごく好きで、大好きで、どうにかなりそうって、ちっともわかってないんだ。 「青の、欲しい」 「……」 「あっ、あぁぁっン」  声を我慢しないでいると、俺って、指が抜けるだけで、こんな声出すんだ。甘くて気持ち良さそうな声にちょっとびっくりする。いつも、キスとか自分の手とか、枕で押さえて我慢してたから。でも、我慢しないでいると、なんかさ、いつもよりももっと――。 「青、今日、ゴムすんの?」  いつもはしてる。なんか、たまに、なんとなくゴムしないでして欲しい時があってさ。青のこと丸ごと欲しくなる時はゴム、しないで欲しいなぁって思ったりして。ダメなんだけど、しないといけないんだろうけど、たまに、付けてない。そして、その付けてない頻度がちょっとだけ高くなったような気がする今日この頃。だったんだけど、今日? あえて、クリスマスの今日、付けるの? 「青……」  青が声を欲しがるんなら。俺は、青の全部をクリスマスだからって欲しがったら、ダメ? さすがにアウト? 「青」 「今日は、してないと、やばい、と思う」  なんで? だって、青と繋がれるのすごく幸せなのに。 「声、我慢してないからかな、今日のみつの中、やばい」 「!」 「だから、ゴムくらいしてないと、止まらないと」 「いいよ」  ぎゅっと抱きついて首に全部でぶら下がったら、さすがに青だって根負けして、俺の上に重なってくれる。素肌同士がぴったりと触れ合って、蕩けそう。 「このまま、して」 「っ」 「プレゼント交換」  そうだ。これ、してないじゃん。家族と過ごすクリスマスにプレゼントは必要でしょ? 俺は青に声を、とても気持ち良さそうな甘い声をギュッと抱きついて耳元で囁いてあげるから。青は俺の中に早く、欲しい。 「あっ! あぁっ……ン、ぁ、青っ、青っの、熱いっ」 「みっ」  ゆっくり、じっくりと抉じ開けられると、青の形を、大きさを、熱さを感じて身震いがする。ゾクゾクって、快感が背中を駆け上って、たまらなく気持ちイイ。 「青の、全部、来てて、奥が」 「みつ、煽らないで。それでなくても、声我慢してないから、力抜けてるのか、みつの中、すごく柔らかくてでも狭くて、色々頭から吹き飛び沿うなくらい気持ちイイのに」  険しい表情の青がすぐそこにいた。すぐそこで、俺のことを突き上げながら、もっと奥にって、ゴム越しじゃない切っ先を押し付けてくる。 「あぁぁああっ! ン、あンっ」  俺の名前をうわ言みたいに呟く姿。それを抱き締めて背中に爪まで立てて、くっついて離れたくない俺。 「俺の中、気持ち、イ? ン、ぁ、んっ……青、キス、もっと、しよ」 「みつ」 「いっぱい触って? 俺も、いっぱい、触る、ぁン、から」  突き動かされて声が途切れる。何度も何度も奥に刺さる青が気持ち良くて、ねだりながら合間に甘い声を上げて、また「もっと」ってねだるんだ。そしたら、ほら。 「青っ」  青が気持ち良さそうに表情をゆがめるから。とても好きなんだ。青の、その顔。眉をひそめて、苦しそうに乱れた呼吸。汗で濡れた髪。喉奥で何かを飲み干して上下に動く喉仏。俺の奥にいきたいから、逃げないようにと掴む手、肌に食い込む指。いつもの甘いスイーツ男子とは全然違う荒々しくて激しい青の全部、全部丸ごと。 「青、中に、して、俺と一緒に、もぁっン、ぁん、イくっ」 「みつ」 「青の全部、欲し、あっ、あっ、あぁっ」  プレゼント交換しよう。 「みつっ」 「あ、イくっ、青、イ、いくっ……ぁ、ひゃン、あ、あぁっ」  ぎゅっとしがみついて、全身で青のことを抱き締めた。奥に放たれる熱に溶けそうで、指先まで痺れる快感に浸りながら、甘い甘い声を青にあげる。 「あっ…………ン」  ドクドクと打ち付けられて満たされる身体の奥が愛しくて、掌で自分のお腹を撫でた。自分の放ったものが胸まで飛んでしまった、やらしくて甘い身体を撫でて。 「メリークリスマス、青」 「!」 「ちょ、青、そんな大きく」 「もお! なるに決まってるじゃん! お腹撫でてそんな可愛く微笑まれて、我慢できるわけないじゃん! みつの魔性!」 「あっ、あぁっ……ン」  だって、仕方ないだろ。声我慢せずに出したら、すごく気持ち良さそうな声色でびっくりしたんだ。いつもは我慢してたけど、自分がこんなに気持ち良さそうだなんて知らなかった。 「だって、青のこと、ずっと捕まえてたいからさ」 「!」 「青のこと大好きなんだ」  大好きって言って、キスして、抱き合って。 「俺だって! みつのこと! 大好きだし!」 「うん」 「すっごい、好きなんだからね!」 「うん」  怒ってる青がたまらなく可愛くて、笑いながら、ぎゅっと抱きついて、ムスッとしてる唇にキスをひとつ。そしたら、負けじと青もキスをくれて、そんな交換こをずっとずっと続けていきたいって、願うんじゃなくて、思ったんだ。続けていようって、笑いながら思っていた。

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