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ドキドキ

先生が連絡事項を喋ってる── 俺はさっきから背中が落ち着かなくてそわそわしている。転校生の坂上が気になってしょうがない。何なんだろう、調子狂う。 「……っひ?」 俺の全背中に意識が向かってるのに突然そこを突っつかれて、思わず体が弾み変な声が出そうになった。 あっぶねぇ…… 背後からクスクスと小さな笑い声。先生はそんな俺には気が付かず、相変わらず話を続けている。 「ねえ名前。なんていうの?」 小声で坂上が聞いてきた。俺は振り返らずに少しだけ体を後ろに倒してから「陽介」と呟いた。 「陽介かぁ。 よろしくね」 そしてまた、トンと背中を小突かれた。こんな些細な内緒話でも俺はなんだか特別に感じてドキドキした。陽介って名前で呼んでもらった。多分このクラスで俺が一番最初。たかだかこんな事で凄い優越感を感じる。なんなんだろうな、変な俺…… 休み時間になると坂上の周りに人が集まる。どこから来たんだとか、どこに住んでるんだとか、好きなタイプは……とか。質問攻めにあいながらも坂上は嫌な顔もせずに笑顔でそれらに答えていた。 俺もみんなの輪の中にいたけど、とくに話しかけることもなく只々坂上の顔を眺めて話を聞いていた。可愛い……カッコいい。こんなにぎゅっと気持ちを鷲掴みにされた事なんて今までなかったから、これが恋なんだ! これが初恋? やべえどうしよう! って一人頭の中で浮かれまくっていた。 「………介、陽介!」 坂上に呼ばれて我に返る。坂上は俺を呼んだのにじっと俺を見つめて何も言わない。え? やだ……何? 恥ずかしい。 「えっと……何?」 「陽介ってイケメンだからさ、そんなに見つめられると俺照れちゃうよ」 坂上は悪戯っぽくそう言って笑い、周りのみんなが爆笑した。 ちょっと待って……凄い恥ずかしい。そんなに見つめてたつもりはなかったんだけどな。

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