5 / 134
圭ちゃん
俺は坂上と席も近くだったからすぐに仲良くなる事ができた。「好き」と言う気持ちがだいぶ先行して、俺から見た坂上は圧倒的に自分と気が合ういい奴だと確信していた。実際元から仲が良かった靖史ともすぐに打ち解け、三人で一緒にいる事が多くなった。
「なあなあ、いつまで俺のこと坂上って呼ぶの? 名前で呼んでくれていいんだよ? よそよそしいじゃん」
坂上にそう言われることが多くなる。自分でも名前で呼びたいってのはあるんだ。だって俺のことは「陽介」って呼んでくれてるわけだし? でもなんかタイミングを逃してしまって改めてそう言われると照れくさくなってしまってダメだった。そんな俺の心中を知らない呑気な靖史はちゃっかり初日から「圭」なんて呼び捨てで呼んでいる。クラスの奴らも何人かは「圭」呼びだったから、正直「クッソ!」と思っていた。
「け……圭ちゃん」
「は? なんで圭ちゃんって、ちゃん付けなんだよ! 女子かよ……でも陽介ならいいや、圭ちゃんでも……許してやる」
何となく靖史や皆んなと同じじゃ嫌で、パッと頭に浮かんだ「圭ちゃん」をぽろっと言ってしまった。女の子みたいで嫌だと睨まれたけど、すぐに「陽介なら許す」とお墨付きをもらえたから、今日のこの日から俺は「圭ちゃん」と呼ぶようになった。
また少し、圭ちゃんに近付けたと思って俺は嬉しかった。
ともだちにシェアしよう!