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最初の休日
今日は朝から気分がいい。
何故なら久し振りに圭ちゃんと会えるから! 靖史もいるけど、そんなのどうでもいい。お互い高校が違ってもこうやってまた約束をして会えるということが大事なんだ。このまま俺だけ何も誘われなくて会わなくなってた可能性だってあったんだ。それを思ったら靖史というお邪魔虫がいたところで気にもならない……俺、寛容!
圭ちゃんと靖史の通う高校は制服がないらしい。私服だから毎日着るものに気を使って大変だと圭ちゃんがボヤいていた。だから今日は新しい洋服を買いに行きたいんだってさ。
オシャレになんか気を使ったら益々圭ちゃんモテちゃうじゃん…… それに中学の時は制服だったし、休日もそんなに遊んだことないから俺だって圭ちゃんの私服姿を見るなんてレアな事なのに。なんなの? ズルくね? カッコいい圭ちゃん、俺も毎日見たい……
待ち合わせ場所に十分以上も早く着いてしまった俺は、そんなことを悶々と考えながら圭ちゃんを待っていた。
「陽介! 久し振り!」
向こうから愛しい圭ちゃんの声が聞こえた。見るととびきりの笑顔で俺に向かって手を振っている。なんなの? やっぱり可愛すぎかよ! 笑顔が眩しくてニヤケてしまう。ヤダもう、好き過ぎる……
「陽介、久々に見たらなんかますますイケメンになってない?」
会うなり第一声がこれ…… 圭ちゃんにそんなこと言われたら舞い上がってしまうじゃないか。後ろで靖史が笑ってる。イケメンにイケメン言われて嫌味にしか聞こえないけど、でも好きな人に褒められるのはやっぱり嬉しい。
「……圭ちゃんほどじゃないよ。ありがと」
久しぶりでちょっとだけ緊張する。俺がそう言ったら、圭ちゃんは少しだけ顔を赤くして、照れた様子でふふっと笑った。靖史がニヤニヤしてるのはちょっとムッとしたからスルーした。
三人でショッピングをして、またカラオケへ向かう。歌が上手な圭ちゃんはきっとカラオケが好きなんだろうな。俺は正直あまり好きじゃないけど、圭ちゃんが行きたいのなら何処にだってついていく。圭ちゃんの歌を聴くのはすごく好きだから。
でも今日のカラオケは、三人で会うのが久しぶりということもあり、お互いの近況報告も兼ねて歌よりもお喋りに花が咲いた。
「そうそう! 陽介聞いてよ。圭ってばさ、新しい友達に圭ちゃんって呼ばれるのめっちゃ嫌がって誰にも呼ばせないんだぜ。圭ちゃんって呼ぶな!っていちいち怒んの、ウケるよね」
「……だって俺ちっさいから。みんなバカにしてんだもん! ムカつく!」
圭ちゃんはああ見えて背が低いことを気にしてる。そんなに特別小さいわけでもないのに。怒った顔もまた可愛い。でも「可愛い」だって圭ちゃんには禁句なんだ。こういうの凄く気にしてるんだもんな。
あ……でも俺、圭ちゃんのこと、いつまでも「圭ちゃん」って呼んでる。
「ごめん、俺……圭ちゃんって。もしかしてやっぱ嫌か?」
「ん? ……よ、陽介はいいんだよ! 最初に許すって言ったろ! なんだよ今更かよ!」
初めて「圭ちゃん」って呼んだ時のことを思い出した。凄いドキドキしたっけ…… 懐かしいな。俺だけに許された呼び方。あの時と変わらず、優越感に包まれる。
「陽介よかったな。 圭のこと圭ちゃんって呼べるのはお前だけだとさ」
俺だけ特別……嬉しいし、照れ臭い。
「なんだよ靖史! 悪いかよ!」
ふと見ると、そう言った圭ちゃんもちょっと照れ臭そうに見えてしまって、なんだか胸がウズウズした。
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