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緊張
ちょっと緊張しながらインターホンを鳴らす。すぐに圭ちゃんの声が響いた。
「いらっしゃい!」
声だけで嬉しくて頬が緩む。オートロックの扉を抜け、俺は急いでエレベーターに乗り込んだ。
圭ちゃんの家に来るのは別に今日が初めてじゃない。だけど俺が圭ちゃんを猛烈に意識し始めてからは初めて。おまけにいつも一緒の靖史が今日はいない…… あれだけ靖史の事をお邪魔虫扱いしてたのに、いざいないとなったら緊張しまくりでどうしようもなかった。
玄関の扉の前で一呼吸…… する間も無くいきなりバンッとドアが開いた。そこには待ってましたとばかりな圭ちゃんの笑顔。待ちきれなくてドア開けちゃった! って感じが可愛くて、どうしたって嬉しくて笑ってしまった。
圭ちゃんは料理を始めていたのかエプロン姿。シンプルな黒いエプロンを着けた圭ちゃんが笑顔で俺を見ている。
「どうした? 早く上がれよ……あ、それ飲みもん? サンキューな」
「うん、お茶買ってきた。お邪魔します」
圭ちゃんに買ってきたお茶を手渡し、ついでに靖史が来られなくなった事を伝えた。
「え! マジか? 靖史の分も作り始めちゃったよ、どうしよう…… 」
「俺が靖史の分も食べるから…… ところで今日のメニューは何?」
「んとね、煮込みハンバーグ! 陽介ハンバーグ好きでしょ?」
圭ちゃんは自覚無しなんだろうけど、その上目遣い俺以外には見せないでほしい。なんて可愛い顔してんだよ……参った!
「圭ちゃんのハンバーグなら余裕で二人分食えるし」
「マジで? やった! ひと段落するまでもうちょいだけ待っててね。リビング行ってて……」
圭ちゃんは料理の途中なのかキッチンに入る。俺はソファーに腰掛けてテレビをつけ圭ちゃんを待った。
やっぱり靖史がいないと緊張する。このドキドキ感も心地良いけど、ヘマしないように気をつけなくちゃな…… 圭ちゃんにはカッコ悪いところは見せたくない。
しばらくすると、エプロンを外した圭ちゃんがグラスを持ってこっちに来た。
あ、エプロン外しちゃったんだ。似合ってたのに残念……
俺の緊張をよそに、圭ちゃんは当たり前にいつもと変わらなく接してくる。お茶の入ったグラスをテーブルに置くと、ちょっとだけ真面目な顔をして俺の方を振り返った。
「今日さ、陽介に話したいことがあるんだよね……」
突然の報告……
何だろう? なんだろう?? ドキドキが止まらない。
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