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突然の報告
「あのさ、俺…… 」
いつになく真剣な表情に、俺の緊張もマックスだった。
まさか……俺の気持ちに気付いて? ってそもそも卒業式に告ってんだけどね、俺。伝わってないけど、今になって気付いちゃった? やべえ! 圭ちゃん! 何言うの? 今度こそフラれる?
「バンドやろうと思って! 」
めっちゃ笑顔な圭ちゃんがドヤッとした表情を見せた。
へ? ……バンド?
一気に緊張が解けていく。
「俺、ずっとギターやっててさ、日本来てからも毎日ギター弄ってはいたんだけど…… 一応親父からはギターは続けろって言われてたし、そろそろバンドでもやろうかなって」
日本に来てからバンドは絶対やろうと思っていたらしい。俺の周りにはバンドはおろか楽器を嗜むような人間はいなかったから全然ピンとこなかった。
「あのギター、飾りじゃなかったんだ」
「な? 失礼な! ちゃんと弾けるよ! てか、自分で言うのもアレだけど、かなりの腕前だと思うよ」
部屋の隅に鎮座しているかっこいいギターを指差しそう言ったら怒られてしまった。まあ、父親が世界に通じるギタリストだって言う時点で圭ちゃんが下手くそな訳がない。
「靖史がドラム、俺はギターボーカル。そんで同じ学校の友達一人がベース。少しずつ練習してるんだ」
「へえ、もう活動してんだね」
圭ちゃんの話を聞いていて少し複雑だった。だってバンドなんてやったら圭ちゃん益々モテちゃうじゃん。歌だってめちゃくちゃ上手いしさ、ライバルが増えるのが目に見えてる…… そんな風に思ってしまう俺ってやっぱり器が小せえな。
「でもさ、俺ほんとはギター嫌なんだよね。ギター好きだから練習は怠らないけど、親父がギタリストだからってのがさ、なんとなく……だから陽介、ギターやらね?」
は? 圭ちゃん可愛い……ってそうじゃなくて!
「いやいや! 何言ってんの? 俺が? 無理だって! 圭ちゃんの頼みは何でも聞いてやりたいけどさ、ギターなんて触ったこともないし、人前に出るのダメだもん。ごめんな……俺は無理だわ」
「そっかぁ、残念……陽介かっこいいから絶対サマになると思うんだけどな。嫌じゃしょうがないな」
初めから無理強いはしないつもりだったのか、しつこく誘われるようなことはなかったからちょっと安心する。でも圭ちゃんしょんぼりしちゃった…… ごめんね。
「ごめんね圭ちゃん。てかさ、俺かっこよくないから……」
圭ちゃんに「カッコいい」と言われる度に嬉しく思う自分と切なく思ってしまう自分がいる。圭ちゃんはどんなつもりでそう言ってくれてるのだろう。どんなつもりも何も、単なるお世辞……深い意味なんてこれっぽっちもないのに自惚れてしまいそうになる自分が哀れに思った。
「そんな事ない! 陽介はカッコいいよ」
「………… 」
いつもの圭ちゃんの表情とは少し違って見えた。どんな事を考えてる? 圭ちゃんから見た俺はどんなだろう…… ただの友達? それとも親友? こんなことばかり考えてる俺の本性を知ったら圭ちゃんはどう思うのだろう……
「……ありがとう」
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