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味なんかわかりゃしない
「……圭ちゃん」
「………… 」
やっぱり俺、ちゃんと気持ちを伝えたい。
圭ちゃんは何の意識もなく、きっと軽い気持ちで俺の事を「かっこいい」って言ってくれてるのはわかってる。でもね、俺なんかより圭ちゃんの方がずっとかっこいいんだよ…… 圭ちゃんの笑顔で俺はいつもドキドキするんだ。カッコいい圭ちゃんに見惚れてしまうんだ。
どうしたって色んな場面で俺は圭ちゃんの事を意識してしまう。
それだけ俺の心を動かしているんだってこと、圭ちゃんにわかってもらいたい。
「あ! そろそろ飯にしない? 準備するね」
「あ……ああ 」
突然圭ちゃんが思い出したかのようにそう言って俺から離れる。俺の心を見透かし上手くかわされてしまった気がしてならなかった。一瞬垣間見た圭ちゃんの表情。あまり見たことのないバツの悪そうなその顔に、もしかして俺の気持ちに気がついているのかも……と少しだけ期待した。
圭ちゃんが、美味しそうな煮込みハンバーグとサラダを運んでくる。相変わらず美味そうな盛り付け。勿論美味しいのは当たり前なんだけど、盛り付けも店の料理みたいに綺麗だから圭ちゃんの器用さがよくわかる。俺には絶対に真似できないや。
「いただきます!」
二人で一緒にパチンと手を合わせて、いただきますの挨拶をする。ひと口食べてやっぱり美味しくて、俺は「美味い!」と大きな声を上げた。嬉しそうに俺を見る圭ちゃんが可愛くて、目が合っても恥ずかしくて逸らしてしまう。夢中で俺は靖史の分まで手をつけ、あっという間にそれも平らげた。
さっきから誰にも見られていないテレビが 空元気なバラエティ番組を流している。
圭ちゃんも黙々とハンバーグを口に運んでいる。ちょっと沈黙してはお互い目が合い、さっと逸らす。初めこそ「美味い!」だの「さすが!」だの喋りながら食べていたけど、段々小さな沈黙が続くにつれ、俺は圭ちゃんのことを意識してしまった。心なしか圭ちゃんも顔が赤いような気がする。少しは俺のこと、意識してくれてるのかな? いや…… 単に飯食って体温上がっただけかな? きっと恥ずかしくって赤くなってんのは俺だけだ。もう後半はハンバーグの味だってわからなくなっていた。
静かに夕飯を食べ終わり、圭ちゃんが「片付けてくるね」と言ってキッチンへ行く。俺は決心して圭ちゃんの後をついて行った。
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