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二度目の告白

洗い物をしている圭ちゃんの後ろに立つ。 「……圭ちゃん聞いて。あ! 振り向かないで 洗い物続けてていいから……てか、恥ずかしいから絶対にこっち、振り向かないで」 「………… 」 俺の言葉に圭ちゃんは何も言わず洗い物を続けている。俺は圭ちゃんの細くて綺麗な頸を見つめ、小さく深呼吸をした。 「圭ちゃんあのさ、卒業式の事覚えてる? 俺 圭ちゃんの事、好きだって言ったでしょ? ……それね、友達としてじゃなく、恋愛対象として……恋心の意味で圭ちゃんの事が好きだって言ったの」 心臓が喉から出ちゃいそう。ツバ飲み込んだら吐きそうだ…… 「うん。知ってた……」 洗い物の手を止めた圭ちゃんの口から出た言葉に、俺は驚きを隠せなかった。 え? 知ってた? あの時ちゃんとわかってたっていうのか? ならなんで…… 「陽介、ごめんな……俺、陽介があの時真剣に告白してくれてたのちゃんとわかってた。でも俺はあやふやに返事を誤魔化したんだ。わからないふりをした…… 今まで通りの付き合いがしたかったから」 「……うん」 圭ちゃんが言わんとしている事がわかってしまった。そりゃそうだ…… 戸惑いしかないよね。 「俺も陽介の事好きだよ。一緒にいて楽しいし、陽介が一番大事な友達だって胸張って言える。大好きだって自信持って言える。でも俺のその気持ちが恋なのかどうかは俺はわからないんだ。……ごめん、陽介、ごめん」 シンクに目線を落としたまま圭ちゃんがポツリポツリとそう俺に伝えてくれた。 泣きそうになってしまった。圭ちゃん、謝らないでよ……ちゃんと気持ちが伝わってたのがわかって、俺、今凄く嬉しいんだから。 でも俺のせいで悩ませてしまった。困らせてしまった。それでも優しい圭ちゃんが愛おしく思う。 「圭ちゃん……ごめん、抱きしめていい? 嫌だったら離れていいから……」 調子に乗ってしまった。でもどうしようもなく愛おしくてこの手で抱きしめたくなってしまったんだ。でも圭ちゃんは 黙って頷いてくれた。 俺は静かに後ろから圭ちゃんを抱きしめた。圭ちゃんは一瞬ビクってなったけど、黙って俯いたたまま俺に抱かれてくれた。 ── どんな顔をしているんだろう。 振り向かせて圭ちゃんの顔を見たい、という衝動をぐっと抑え、俺は離れた。 よかった……拒まれなかった。 「ありがとう 圭ちゃん! ハンバーグごちそうさま。俺、そろそろ帰るわ」 「う……ん、またね」 必死に普通を装い、俺は顔を見られないように圭ちゃんから離れる。これ以上ここには留まれない……こんな顔、圭ちゃんに見せたらまた困らせてしまうだけだ。 気持ちをちゃんと伝えられて、それを理解してもらえただけで幸せな事なんだ。そう言い聞かせながら俺は家に帰った。 これが俺の二度目の告白── 伝えられた嬉しさと、何も変わらない事の切なさに、やっぱり涙が止まらなかった。

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