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圭の本心

陽介が好きだと言っていたハンバーグを作る。靖史もいるけど、いつもあいつらと遊ぶときは何となく陽介を優先にしちゃう自分がいた。 早めに下準備をして友人を迎え入れる支度をする。靖史は学校で毎日会っているからいいけど、陽介とはやっぱり久し振りだと思うと楽しみでしょうがなかった。 いつもと同じ友人と、いつもと同じに楽しく過ごす…… その「いつも」と今日は少し違っていた。 靖史が都合が悪くなって来られなくなったと陽介が言った。俺は既に三人分の飯の準備していた。靖史の奴、もう少し早く言ってくれればいいのに……とイラッとしたけど、靖史の分も自分が食べると陽介が言ってくれて、おまけに俺の料理を褒めてくれたから、イラつきもあっという間に消えてしまった。 今日は、陽介にバンドを始めたことを話したくて家に呼んだんだ。そう、この話をするのが目的。もう靖史達と何度か練習も始めている。俺以外は全くの初心者。本当は俺は陽介にも一緒にやってもらいたかったんだけど、誘ったら速攻で断られてしまった。陽介とは付き合いも長いから、その表情を見て本気でダメだと言っているのがわかる。謙遜して「やらない」と言っているのならもう少ししつこく誘ってもよかったんだけど、陽介の言う通り、人前に出るのはちょっと苦手なのは知っていたから俺は潔く諦めた。 もし陽介がギターやってくれたらさ、俺が教えてやれるし練習だって沢山するから今以上に頻繁に会う事だって出来たのに、それを思ったらちょっと残念だった。 「………… 」 陽介が何か考え事をしている。 何を考えてるんだろう…… でもこの雰囲気、気不味く感じた。とりあえず飯を食おう! と陽介に声をかけ、俺はキッチンに逃げた。あの卒業式の時の気不味い雰囲気。やっぱり俺は上手く陽介と向かい合えなかった。 いつまで俺は誤魔化して逃げなきゃいけないんだろう…… 俺のハンバーグを美味いと言って嬉しそうに食べている陽介。時折沈黙が流れ、何となしに目が合った。その度にお互い視線を逸らして微妙な空気が流れていく。陽介の考えていることが何となくわかってしまう。わかってるからこそ、今日はちゃんと向かい合ってやらなきゃいけないと覚悟を決めた。 知らないふりしてごめんな…… 今まで誤魔化しててごめんな、陽介。 洗い物をしている背後で改めて陽介に告白をされた。振り向くなと言われたから陽介がどんな顔をしているのかわからない。それでも声が震えているのがわかって胸が痛かった。 陽介の辛そうな顔なんか見たくない…… 俺が卒業式の時の告白の意味をちゃんとわかっていたと知った陽介はどう思っただろうか。俺のこと、ずるい奴……汚ねえ奴だと思っただろうか。陽介にそんな風に思われてしまったら俺はどうしたらいい? 自分で陽介から逃げたくせに、いざこうなったら嫌われたくないと思ってしまう自分が本当にズルくて嫌な奴だと思ってしまった。泣きたいのは陽介の方なのに、なんで俺が泣きそうになってるんだろうな……烏滸がましいにも程がある。 陽介に「抱きしめていいか」と聞かれた。別に嫌じゃないし、俺に断る理由なんてない。 小さく頷いたら、陽介は遠慮がちに俺を背後から抱きしめてくれた。俺、小ちゃいから陽介にすっぽりと包み込まれる感じがして暖かかった。 陽介の吐息を感じる。 胸の鼓動も伝わってくる…… 凄いドキドキしてる。 何で俺、泣いてるんだろうな。 陽介が俺を想う気持ちが痛いくらいに伝わってくる。それなのにその気持ちにちゃんと答えて やることが出来ないから、もどかしくてきっと涙が溢れてくるんだ。 きっとそうなんだ。

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