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彼氏?
いつものように、暇な喫茶店でのんびりと仕事をする。突然来てくれた圭ちゃんのことを考えながら、嬉しくなってどうしても口元が緩んでしまう。
わざわざ俺に会いに来てくれたんだよね……
告白を理解してもなお、俺のことを避けることなく今まで通りに接してくれる。寧ろ以前より特別な感じにも思えてしまって嬉しくてしょうがなかった。
ニタニタとご機嫌で仕事をしていたら、ふと視線を感じた。その方向に顔を向けると薄っすらと笑みを浮かべた高坂が俺を見ていた。目が合うと途端に幸せな気分が消え去って現実に引き戻される。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」
「コーヒー頂戴」
この人、ここのところ俺がシフトに入っている時は必ずと言っていいほど来店している。ちょっと鬱陶しく感じてきたところだ……でも一応お客様だし邪険にもできない。何となく作り笑顔で俺は接客をしていた。
「先生、最近よく来ますね。お疲れ様です……」
「うん。陽介くんを見に来たんだよ」
いつの間にか俺、名前で呼ばれてるし。 それにそういう冗談、面白くない。この先生はただでさえ学校でもそういう噂があるんだから自重すればいいのに……何を考えているんだかわからない、このフワッとしたところがきっと俺は苦手なんだろう。
「そういう冗談、やめてくださいって言ってるでしょ」
俺はコーヒーを用意して、先生に出した。
「ねえねえ、さっきの赤い髪の子は誰?」
コーヒーを啜りながら、にやけた顔でそう聞いてきた。……見られてたんだとわかり、何となく嫌だと思った。
「えっと……中学の時の友達です」
「ふぅん、可愛い子だね。陽介くんの彼氏?」
は?
「そんなんじゃないです! 何言ってんですか? 彼氏って! 」
そりゃ圭ちゃんが俺の彼氏になってくれたら舞い上がるくらい嬉しいけどさ……何でこいつにこんなことを言われなきゃなんねえんだ? そもそも俺の「彼氏」って何だよ。俺が男が好きだってこいつ、そう思ってるってことだよな?
一気に不信感を抱いてしまった。
高坂はにやにやと笑い、俺の反応を楽しんでるように見えた。この人、絶対俺の事を揶揄って楽しんでるんだ。
やっぱりムカつく。
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