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一番の存在で…
バイトが終わって更衣室で着替えをすませる。鞄から携帯を取り出してチェックをすると圭ちゃんからのメッセージが入っていた。
『夕飯一緒に食べない? 一人で飯は寂しいから』
寂しいから……って!
突然のメール。食事のお誘い! 疲れなんか一気に吹き飛び元気になった。圭ちゃん効果は抜群だ。
俺が二度目の告白をしてからも、圭ちゃんは変わらずに接してくれる。
嬉しいけど……
それはやっぱり「友達止まり」ということを示している。そりゃそうだ……避けられるよりかはよっぽどいい。このまま圭ちゃんの中で俺の存在が一番であってくれればそれだけで幸せなこと。それが「友人」だとしても、圭ちゃんの中で俺が「一番」なのには変わらない。
俺はすぐにオッケーの返事をして、圭ちゃんの家に向かった。
圭ちゃんの家につくと、またまたエプロン姿の圭ちゃんが笑顔で俺を迎えてくれた。
「陽介お疲れ様。いらっしゃい!」
……この可愛い人は俺の嫁か? そんなふうに錯覚してしまうくらい、やっぱり俺は圭ちゃんの事か好きで堪らない。
照れ臭くて顔が赤くなってしまう。「お邪魔します」と言いながら、にやけそうになる顔をぐっと堪えて部屋に入った。
「ねぇねぇ! 見て! ……ジャジャーン! おっ酒だよ」
嬉しそうに圭ちゃんがビールとワインを出して来た。
「食事の時にね!」
そう言って、圭ちゃんはまた酒を冷蔵庫に戻した。
「もうじき出来るから待ってて」
「うん、ありがとう」
俺はいつもの定位置、ソファに腰掛けテレビをつけた。生姜焼きのいい匂いがする。圭ちゃんの部屋で手料理を振舞われて、こんな優遇を受けているのは俺だけだと信じたい。俺の恋は実らないけど、やっぱりこの状態は幸せすぎて喜びしかなかった。
幸せを噛み締めているとすぐに圭ちゃんが食事を運んで来た。
「何この生姜焼き! めっちゃうまそう! 早く食べたい!」
出来立てホヤホヤ、生姜焼きに添えられているキャベツの千切りも店のみたいに綺麗に切れている。一々「凄いな!」と口から褒め言葉が溢れてしまう。そんな俺の顔を見ながら圭ちゃんは嬉しそうに笑うから、俺まで凄く嬉しくなった。
二人で声を揃えて「いただきます」をする。こんな他愛もないひと時がとっても幸せに感じた。
食べながらの話題は最近出来たという靖史の彼女の話。隣のクラスの由香ちゃんという子らしい。
びっくりなのが靖史の方が告白されたんだって。てっきり靖史が猛アタックでもして付き合うことになったんだと思ってた。
由香ちゃんの一目惚れ。
素直そうで可愛いから、とりあえずお試しに付き合ってみるかって、付き合い始めたらしい。
結構簡単な理由で「付き合う」ってなるんだな……と、ちょっと羨ましく思ってしまった。
おまけに由香ちゃん、巨乳だって。ああ、決め手はそこか! と圭ちゃんと二人でゲラゲラと笑った。
ふと気がつくと、俺のすぐ隣に圭ちゃんが座ってる。夢中で話すたびに俺の方へ顔を向け、じっと見てくる。きっと圭ちゃんは何とも思っていない。自覚なんてないんだろうけど……
俺からしてみたらこれは無防備すぎる!
仮にも俺は圭ちゃんに告白をした人間だぞ? 靖史と由香ちゃんみたいに恋愛をしたいと思っている男に対して、いくら気心が知れてるからってこんなに接近して何を考えているんだろう……いや、何も考えてないからこうなんだろうな。
意識されてないのもちょっと悲しいものがある……
そうは言ってもこの距離感はいつもの事。でも今日は酒が手伝ってか妙に近くに感じてドキドキしてしまった。
やべっ、酔ってきた……
圭ちゃんは可愛い見かけによらず、酒が強い。俺は残念ながら、そうでもない。
圭ちゃん! 近いよ! 頑張れ! 俺の理性……!
※未成年の飲酒表現がありますが、飲酒は成人してからです。未成年の飲酒を推奨しているわけではありませんのでご理解の上お読み下さい
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