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「好き」の暴走「理性」の帰還

「俺、おかわり持ってくるね 」 圭ちゃんがスッと立ち上がる。 思わず俺は圭ちゃんの腕を掴んで引き寄せてしまった。 ダメだ、止まらない…… 圭ちゃんの腰を自分に引き寄せ、そのまま抱きしめてしまった。「好き」の気持ちが暴走しているのがわかる。ダメだと思っても圭ちゃんを抱きしめる腕に力がこもってしまう。 鼓動が高鳴る。 ダメだ……どうしよう。こんな事をしたら嫌われてしまう。たった今、この状況は幸せだと俺は納得したんじゃないのか? 友達ですらいられなくなってもいいのか? バカな事をしてしまったと圭ちゃんを抱きしめながら泣きそうになってしまった。 僅かな沈黙を破り、俺の気持ちを察してか圭ちゃんが口を開いた。 「陽介……? どうした?」 恐る恐る目を開けると、上目遣いの圭ちゃんが俺を見ていた。 俺は慌てて目を逸らす。圭ちゃんの優しさに甘えて俺は何をやっているんだ……恥ずかしさで地面に埋まりたくなった。 「……ご、ごめん! 圭ちゃん。俺、酔ってる……」 これ以上はまずい、止まらなくなる。「好き」の暴走も少し落ち着き圭ちゃんから離れようとすると、何を思ったのか圭ちゃんの方から俺にぎゅっと抱きついてきた。 「ちょっ! 圭ちゃん??」 「俺、……大丈夫だよ。陽介なら嫌じゃない……」 俺の胸に顔を埋めてボソッとそう言う圭ちゃん。ダメだダメだ! やめてくれ! 理性が飛ぶ……! 「圭ちゃん! ダメだって。そんなことしないで……嬉しいけど、俺、圭ちゃんの事好きなんだよ? わかってる? お……俺、色々と止めらんなくなっちまう」 圭ちゃんの首筋にキスを落としたくなる。抱きしめて押し倒したくなる……どんどん頭の中が卑猥な妄想で溢れていく…… 見つめる瞳、その半開きの唇に貪りつきたくなる。 「だから、いいってば。俺、陽介なら……いい……んっ!」 圭ちゃんが言い終わる前に、俺は堪らず唇を奪ってしまった。 「……んっ! ん……んっ……」 初めてのキス…… 無我夢中で俺は圭ちゃんにキスをする。軽く開いた口の中に舌まで捻じ込んでしまった。ゆっくりと舌を絡めると、圭ちゃんもそれに答えるようにしてぎこちなく舌先を絡めてくれた。それが嬉しくて気持ちが良くて、俺は堪らず圭ちゃんを後ろに押し倒して頬から首筋にもキスを落とす。 「んっ、あっ……よ……うす……け……」 圭ちゃんのシャツのボタンを外しながらキスを続け、直接圭ちゃんの柔らかい肌に手を添える…… するすると手を這わせ、可愛い乳首をちょっと摘んだ。 「んっ」 圭ちゃんが小さく呻く…… 無抵抗な圭ちゃんに、もう俺は夢中になってしまっていた。小さく漏れ聞こえる圭ちゃんの吐息が俺を更に興奮させる。理性なんてもうどこにもなかった。そんなもの遥か彼方にバイバイだ。 「好き……圭ちゃん、大好き……」 そう囁きながら、圭ちゃんの耳朶を甘噛みしてみる。圭ちゃんはビクッと肩を震わすと、ぎゅっと俺の首元にしがみついてきた。思ってもみなかったその可愛い反応に堪らずもう一度唇を重ねる。 何度も何度も、甘くキスを交わす。 嬉しくて幸せで、気持ちがいい── そしてふと圭ちゃんを見ると……圭ちゃんは泣いていた。 俺は一瞬にして我に返った。今頃理性が戻ってきてももう遅い。 真っ赤な顔をして圭ちゃんが涙を流している。 どうしよう どうしよう どうしよう……! 泣いている圭ちゃんを見て、只々パニックになってしまった俺は、「ごめん!」とだけ言って圭ちゃんの家を飛び出してしまった。

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