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嫌いになんか…

気が付くと保健室には俺一人。 高坂はいつの間にか出て行ったらしい。床に座り込んだまま暫くぼんやりとしてしまったけど、とりあえず家に帰ろうと俺は立ち上がった。 とぼとぼと道を歩きながら考える。 圭ちゃん……なんで嘘ついたんだろう? あの時少し震えてたのは高坂に襲われた直後だったからなんだよね? 怖かっただろうな…… 俺が抱きしめた事で少しは安心出来たかな? なんで嘘ついたんだろう……って、そんなの俺に知られたくなかったからじゃん。 そりゃ言いたくないよな。 俺が傷つくと思ったから? それとも俺に嫌われると思った? 気持ちが通じ合った時のあんなに嬉しそうな笑顔……そしてあんなに悲しそうな笑顔。 俺のせいで、あんな顔をさせてしまった。あんな圭ちゃんは見たくない。 一人で辛い思いなんかさせたくない。 俺は家には帰らずにまっすぐ圭ちゃんのマンションに向かった。 圭ちゃんは家にいて、素知らぬ顔をして「あれ? 陽介どうしたの?」なんて聞いてくる。 俺は黙ったまま、圭ちゃんを抱きしめた。 「へ? ……陽介?」 困惑顔をした圭ちゃんが俺の顔を見る。胸がキュッと痛くなった。 「……ごめんね、圭ちゃん。俺のせいで嫌な思いしたよね。怖かったよね? 俺、俺……気付かなかった。本当にごめん!」 俺の言葉を聞いた圭ちゃんの表情が固まる。みるみる涙が溢れてくるのがわかった。 「陽介謝らないで! ごめんね…… ごめんっ!俺、俺……陽介を傷つけたくなくて……いや、陽介に嫌われたくなくて……言えなかったんだ」 圭ちゃん、震えてる── 俯かないで ちゃんと顔見せて…… 「圭ちゃん? 俺は何があったって圭ちゃんを嫌いになんてならないよ。そんな心配はしないで。あんな悲しい笑顔で嘘なんかつかないで……俺は大丈夫だから。絶対に一人で抱え込まないで。何でも俺に話して。一人より二人がいい。ね? 圭ちゃん……」 「うん……うん。陽介、ごめんね。ありがとう」 背中にまわされた圭ちゃんの手に力が入る。愛おしくてしょうがない。 俺は圭ちゃんの顔を上げさせると、優しくキスをした。赤い顔をした圭ちゃんが少しだけ舌を絡めてくれたから俺もそれに応えて軽く交える。 お互いの涙も混じってちょっとだけしょっぱいキス…… 「……陽介、愛してる」 圭ちゃんにそう囁かれ、俺は涙が止まらなかった。

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