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合鍵
圭ちゃんはとびっきりの笑顔で俺を迎えてくれた。
凄え幸せ! あの時、あんなに絶望していたのが嘘みたいだ。
俺は堪らず、玄関先で圭ちゃんに抱きついてしまった。
「おい! なんだよ陽介。いきなり……」
俺が圭ちゃんの目の前にプレゼントを突き出すと、圭ちゃんはキョトンとして俺を見た。
「はい! ちょっと遅くなっちゃったけど、誕生日プレゼント!」
ぽかんとして俺からプレゼントを受け取ると「は?」とひと言、驚きの声を上げる。めちゃくちゃ可愛いリアクションに、笑ってしまってしょうがなかった。
「……え? え? 俺に? プレゼント?」
圭ちゃん以外に誰にプレゼントなんてあげるんだよ。
「そうだよ。お誕生日おめでとう。大好き!」
「嬉しい。ありがとう、陽介」
圭ちゃんはそう言うと、俺にチュッとキスをした。
圭ちゃんが自らキスをしてくれる……それは紛れもなく俺の恋人だということの証しだ。キスをするのは恋人同士だから……そう改めて実感したら目頭が熱くなってしまった。ダメだ俺、泣き虫だ……
リビングへ移動し、ソファに座りながら圭ちゃんがプレゼントを開け始める。座って落ち着いてから開ければいいのに、待ちきれない様子で歩きながらガサガサ包装を破るもんだから、そこらに紙屑が落ちてしまっていた。ちょっとガサツな感じも意外性があっていい……
「あ! 嘘! これ欲しかったんだよ! マジか? 超嬉しいんだけど!」
圭ちゃんが興奮して叫んでいる。
そんなに喜んでもらえるなんて本当に嬉しい。
「でも、陽介……これ結構高いよな?」
「大丈夫。プレゼント買うために頑張ってバイトしたんだもん」
それを聞いた圭ちゃんはギュッと俺に抱きついてきた。
もう、仕草が一々可愛過ぎる。
「陽介! ありがとう!」
思っていた以上の最高の笑顔で喜んでくれた。
この笑顔が見られるならどんな事でも出来ちゃうよ 俺。
「あ、あのさ、陽介……」
急に圭ちゃんがもじもじしながらこっちを見る。
「ん? なに?」
「今日ってさ、土曜日じゃん?……その、よかったら 今日泊まってかない?……かなって思って」
え……
圭ちゃん、顔真っ赤。
「いいの?泊まっても」
俺が聞いたら圭ちゃんは小さく頷いた。
マジか……泊まるってことは、そういうことだよな? 圭ちゃん顔真っ赤だし。そういう風に捉えていいんだよね?
「じゃ、美味しい晩飯 作ってね」
俺は圭ちゃんの肩を抱き寄せキスをした。
とりあえず着替えを取りに一旦家に戻った。
運悪く出かけていた康介も帰宅して見つかってしまった。
「あれ? 兄貴これから出掛けんの?」
話しかけるなよ……
「ん、今日は友達んとこ泊まるから、夕飯いらない……」
そう言うと、ハッとした顔で俺を見た。嫌な予感……
「え? 兄貴、もしかして例の彼女んとこ? ねえねえ! そうだろ? 彼女とお泊り? エロっ 」
「彼女じゃねぇし、そんなんじゃねえから! お前うるせえよ黙れ」
「えー? 違うの? あ、プレゼントはうまく渡せたの? ねぇねぇ」
いつまでもうるさそうだから、報告だけはしておいた。
「ま、プレゼントはちゃんと渡せたし、仲直りも出来たから。気にかけてくれてありがとな康介」
そう言うと康介はニカっと笑い「兄貴よかったな!」と俺の肩を叩いて部屋に戻った。やっと康介がいなくなったから、着替えなどの支度をして急いでまた家を出た。
圭ちゃんは夕飯の買い物をしてくるから先に着いたら部屋に入っててと言って、俺に合鍵をくれた。
……いきなり合鍵!
鍵をくれたってことはいつでも好きな時に自由に来てもいいよ……ってことだろ? こんなに嬉しいことはないよね。
マンションに着くと、やっぱり圭ちゃんはまだ帰っていなかったので合鍵を使って部屋に入った。
今日の晩御飯は何かな?
俺も何か手伝えることないかな?
……なんもねえな。
俺はソファに座り、テレビを付けて圭ちゃんの帰りを待った。
「陽介来てる? ただいま」
「圭ちゃんおかえり!」
そう声を掛けると照れ臭そうな圭ちゃんがリビングに顔を出した。
「家に帰って来て、おかえりって言ってもらえるの、なんかいいな」
圭ちゃんは俺を見つめ嬉しそうにそう言った。
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