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勧誘

「軽音部! 入りましょう!」 修斗に手を握られてしまい、ブンブンと振り回される。鬱陶しいったらない…… それにしても軽音部? 「軽音部なんてこの学校にあったか?」 「えへっ」 「………… 」 えへっ……じゃねえし。答えになってない。 「バンドやりたくて軽音部入ろうと思ったのに、この学校、軽音部無いんだもん! 酷くね?」 修斗が口を尖らせ文句を言った。そんな事俺に言われてもな…… 「そもそも部活ねえんなら入れねえだろ」 「だから! 軽音部、作るんです! 人数集まれば部活に出来るって言うから頑張って人集めてるんです」 修斗はキリッと顔を作って俺らを見た。 なるほどね。それで上級生の所にまで来て勧誘してるのか…… 「その勢いは褒めてあげるけど、ごめんな。俺は部活入る気ないんだよ」 そう伝えたら大袈裟なくらい「えーーー!」と叫んで修斗は項垂れた。 「それとさ、お前入学して間もないのにこんな上級生のとこ一人でうろついて喧嘩売られても知らねえぞ?」 このテンションで誰にでも絡んでいったら、うざがられるのがオチだろう……喧嘩っ早い連中だって多いから少し心配になってしまった。 「へ? 大丈夫っす。俺強えから……」 修斗はなんて事ない顔してそう言ってのけた。まあ自分でそう言っちゃうくらいだから本当に強いんだろうな。じゃなきゃこんなとこまで来ないか。 「ちなみに部員は何人集まってるの?」 横から純平が心配そうに口を挟む。それ、人数によっちゃ流されて入部しちゃうパターンだぞ? とりわけ純平はイケメンに弱いってもうわかっている。 「……二人」 「は?」 なんだよ全然ダメじゃん。 でも二人、と聞いてピンときた。 「もしかして、もう一人って橘とかいう奴?」 俺がそう聞くと修斗の顔が嬉しそうに綻んだ。 「橘……あ、もう一人は(あまね)って言うんですけど、周のこと知ってたんですか? そう、今んとこ周と俺の二人だけ。あいつが勧誘すると何故かすぐに喧嘩になるから俺が勧誘担当なんです」 ……だろうな。あんなツラして来られちゃ、喧嘩売られてると思う奴が殆どだと思う…… 純平は「橘」という名前を聞いた途端に黙ってしまった。わかりやすすぎだろ。 「ねぇ、先輩軽音部入りましょうよ」 「ごめんな。俺はバイトもあるし、バンドもやる気、ねえんだわ……」 そう言って断ると、しょんぼりしながら小さく頷き、「ありがとうございました」と言いながらまた元気に出て行った。 「陽介、なんで橘が仲間だってわかったの?」 純平に不思議そうに聞かれたから、俺は保健室に橘のギターが置いてあることを説明した。 「修斗君、楽しそうな子だったのになぁ。橘が一緒じゃ残念だ……」 なぜだか残念そうな純平の姿が可笑しくて笑ってしまった。

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