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周との接触

はてさて、なんと言ったらいいかな? とりあえず橘の情報を得るためには保健室だと思い、今日も俺は気乗りしないけど保健室へ向かった。 保健室に入ると、高坂が俺の顔を見るなり嬉しそうな笑顔になる。 「陽介くん、この頃どうしたの? そんなに僕に会いたいの?」 違うって…… やっぱムカつく。 圭ちゃんと関わってくる話をこいつに話すのはどうにも抵抗があるけどしょうがない。俺は高坂に橘のこと、軽音部の事を聞いてみた。 「なぁ、こないだ言ってた軽音部って進展どうなってんの?」 おや?って顔をして俺を見る高坂が「なに? 興味あるの? 軽音部入る?」なんて聞いてくるから 速攻で否定をする。 「部活になりそうなの? 橘はギターだろ? 修斗は楽器やんのかな?」 俺が話していると高坂は「興味あるなら本人に聞いてみたらいいんじゃない?」と、カーテンの閉まってるベッドを指差した。 そっとカーテンを開け中を覗くと、綺麗な金髪が目に飛び込んでくる。そこには規則正しい寝息を立てて眠ってる橘の姿があった。 傍にはギターが置いてある。 人の気配で起きないってことは、熟睡してるな。 気持ちよさそうに眠る橘の顔を見ると、あの時はよくわからなかったけど高坂の言う「顔は良い」の意味がわかるような気がした。 いや、普通にかっこいいだろ…… 目付きが悪いと損だな、なんて思っていたら俺のすぐ横に高坂が立っていた。 「眠ってる姿は天使だよね」 「は?」 ……いやいや、それは言い過ぎだろ。天使って! 高坂の発言にドン引きしていると、橘がモゾモゾと腕を上げ「んんっ…」と伸びをした。伸びてる姿が長っ! 何センチあるんだろう? やっぱりでけえなコイツ。 色んな意味で橘に釘付けになってると、バッチリと目が合ってしまった。 「あ? ……なんだよ?」 あからさまに不機嫌モードで俺と高坂に目をやる橘。途端に目つきの悪いあの時の顔になった。 「橘 おはよ。陽介くんが軽音部の事を聞きたいんだって」 高坂は俺に椅子を出してくれると自分の机に戻っていった。 「起こしちゃってごめんね、橘君……だよね?」 不機嫌顏が治りそうもないこの後輩に向かって、出来るだけ柔らかい物腰で俺は話しかけた。しばらく黙って俺の顔にガンを飛ばして……いや、ジッと見ていた橘が、ハッと何かに気付いた顔をして話し出した。 「俺、橘 周(たちばな あまね)……周でいいっす。前、屋上にいた先輩っすよね?」 急に人懐っこい顔になりそんな事を言うもんだから、拍子抜けした。 「あ、周ね。俺は陽介、鷲尾陽介。二年な。よろしくね」 自己紹介をすると、周はにっこりと笑った。なんだ笑うとめっちゃ可愛い顔してんじゃん。結構なギャップに俺の中のコイツの好感度がグッと上がった。 「陽介さん、軽音部入ってくれるんすか??」 「ああ……ごめん、軽音部に入りたいわけじゃないんだよ。ちょっと聞きたい事があってね……」 チッ…… あれ? 今舌打ちが聞こえたよ? 気のせいかな? 「なんだよ、入部希望じゃねえの? 残念」 そう言うと周は寝起きの時と同じ不機嫌な顔になってしまった。 「で? 俺に何の用っすか?」 あからさますぎる周の態度に、単純だな……とちょっと呆れた。でもこういうわかりやすい奴は嫌いじゃない。 「周はギターやるんだろ? 修斗は何担当なの? ボーカル?」 「冷やかしかよ……」とムスッとしながらも修斗はベースをやるんだと教えてくれた。 「やっぱりバンドをやりたいから軽音部なんだろ? 俺は部活には入れないけど、メンバー欲しがってるバンド知ってんだ。……興味ない?」 とりあえずはライブでも見に来てもらって……と圭ちゃんも言っていたし、今度のライブに誘ってみようかな、と思ってそう言ってみたら、これまた分かり易すぎるくらいの満面の笑みで周が頷くから笑ってしまった。

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