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顔合わせ

凄い笑顔で俺の話に食いついてきた周。 「俺、バンドやれれば部活なんてどうでもいいから!」 え? 軽音部、どうでもいいの? 修斗が一生懸命部員集めしてんじゃねえの? 周の勢いにちょっと驚く。離れて机に向かっていた高坂も振り返り、驚いた顔をして俺を見た。 「いや、バンドやりたいから軽音部作るんだろ?」 そう聞くと「はぁ?」なんて顔をするけど……俺そんなにおかしな事言ったかな? 「バンドのメンバー探すために軽音部に入ろうと思ったけど無かったからさ。バンドできればそれでいいっすよ。部活目的じゃねえから」 そうなんだ…… 兎にも角にもこいつらはバンドがやりたいってわけだったのか。 「俺の友達がバンド組んでてさ、ドラムとギターボーカル、ベースの三人なんだけど、ベースが近々やめちゃうんだよ」 俺が周に説明していると、高坂が口を挟んでくる。 「友達って圭くん? ねぇ、圭くんでしょ」 ……うるせえな。 俺は無視して話を続けた。 「今度ライブやるんだけど修斗と一緒に見に来る? そもそもギターも欲しがってたからさ、向こうにとっては好都合なんだよね。予定合わなけりゃスタジオ練習でもいいって。スタジオはいつでも入ってるからさ」 周がキラキラした笑顔で俺を見ている。 やったね圭ちゃん、 俺、勧誘大成功らしいよ。 あ、でもこいつらはどれだけ楽器出来るんだろうか。クソへたっぴだったらどうしよう…… 大丈夫かな? 「周も修斗も、どれだけ楽器出来んの? まさかこれから始めます……ってんじゃないよな?」 心配になり俺が聞くと、周は得意げな顔をした。 「いや、全然俺ら上手いから。逆にそいつらの方が大丈夫なのかよ」 「………… 」 やっばり生意気だな、こいつ。まあここまで自分で言うんだ。自信があるって事だよな? 「じゃぁ、来週末ライブやるから一緒に行こうか? 修斗にも言っといてよ」 こうして俺は周と約束をして、圭ちゃんのライブに一緒に行くことになった── ライブ当日、俺は周と修斗と待ち合わせをしライブハウスに向かった。 こいつら、私服姿もかっこいいな。目立ちすぎだろ。一緒に歩く俺、大丈夫? 自分がチンチクリンになった気分。そもそも周の背がデカすぎるんだよ。ここまで見下ろされるのなんてあんまりないから嫌な感じだ。 「へぇー、陽介さんてオシャレさんなんですね。かっこいい」 修斗が軽いノリで俺に話しかけてくる。悪いけど嫌味にしか聞こえない。 周は周でさっきからずっと無口だし。また機嫌が悪いのかな? 「修斗はいつもこんなノリがいいの? 元気だよね? それに比べて周は今日は機嫌が悪いのかな?」 思わず聞いてしまった。 「周は夜間のバイト続いてたから単に眠いんじゃないかな? 俺はいつもこんなもん? でもちゃんとTPOわきまえてますよ」 笑いながら修斗が言う。TPOねぇ…… でも、周はともかくとして修斗も気さくな感じで人懐こいから、安心して圭ちゃん達に紹介できるなってちょっとホッとした。 ライブハウスに到着し、中に入るともう既に客が満員状態。 後ろのカウンターでビールを貰うと、二人に好きな所で見てろと伝えて俺は圭ちゃんのいる控え室へ向かった。

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