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ステージ

「圭ちゃん」 俺は扉を開けると真っ先に圭ちゃんに声をかけた。そこには準備をしている圭ちゃんと靖史、透君の姿もある。 「透君、やめちゃうんだって? 寂しいな」 透君とは何度かこうやって会っていたから多少は仲良くなれたつもりだった。 「うん、でもそろそろやめて受験勉強始めないとね……」 意外な透君の返事に驚いてしまった。そっか……受験勉強ね。 「約束だったもんな。ここまで一緒にやってくれただけありがたいよ」 靖史もそう言って笑った。 透君と一緒にステージに立つのは今日が最後なんだって。そう思ったら余計に寂しい。 「新しいメンバーは見つかりそうなの?」 透君に聞かれて思い出した。 「そうそう! 圭ちゃん、今日こないだ言ってた奴ら連れてきたよ。あいつらの実力は知らないけど、とりあえず見てもらおうと思ってさ」 新メンバー候補が来ていると伝えると、三人とも「なら尚更気合いが入るな!」と言って喜んでくれた。 「どんな奴? ステージから確認するよ」 圭ちゃんに言われ、俺は周と修斗の特徴を説明した。 「金髪でデカくて派手な奴と、その近くにいる茶髪イケメン」 あまりの簡単な説明にウケながら、「了解」と返事をする圭ちゃん。 「じゃ、後でね。終わったらここに連れてきて」 そう言うと「よっしゃ行くぞー!」と三人で拳を合わせ、控え室から出て行った。 今日の圭ちゃんの格好── オレンジ色のツナギ姿。サイズが大きいのか、圭ちゃんが小さいのか……ちょっぴりダボッとした袖口が可愛いかった。おまけに伸びてきた赤い髪をピンで留めてる。ピンで留めてちらっとおデコなんか出しちゃって、全く今日も可愛いがすぎる! 心の中で叫びながら俺も客席に急いだ。 客席に目をやると真っ先に周の姿が目にとまる。壁を背にしてビール片手に佇む姿がまた目立っていて、結構な注目を集めていた。 あれなら圭ちゃんすぐわかるな…… 周の横には寄り添うように修斗もいる。俺は遠目で二人を確認して、ステージに出てくる圭ちゃん達を待った。 いつもこの瞬間、ワクワクする。 ギターを弾きながら歌う圭ちゃんは世界一かっこいい俺の自慢の恋人。 いよいよ圭ちゃん達のステージが始まった── 会場はもちろん大盛り上がり。俺はいつも一番後ろで全体を見るんだ。 圭ちゃんはいつも通りに元気いっぱい走り回って、ピョンピョンと飛び回っている。 俺を指差してウインクなんかしちゃって、今日は一段と可愛く見えた。 ふと周達が気になって先程の場所を確認する。周はさっきと変わらず真面目な顔をしてステージを見ていた。修斗はというと周の側にはおらず、どこに行ったのか探してみたら最前でノリノリで盛り上がっているのが見えた。 まあ周はともかくとして、楽しそうでよかった。

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