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大興奮
今日も圭ちゃん、バッチリかっこよかった!
興奮冷めやまず、俺はすぐに控え室へ向かった。でも途中で周達の事を思い出し、慌てて戻る。
「おい、控え室行くぞ」
壁にもたれぼんやりしてる周に声をかけ、修斗を探した。修斗は他の客と意気投合したのか楽しそうに盛り上がっていた。
俺は二人を連れて圭ちゃん達の待つ控え室に向かい、ドアの前に群がるファンを押し退け中に入る。
「圭ちゃん、みんなお疲れ様!」
俺が声をかけると靖史も透君も笑顔で迎えてくれた。そしてオレンジのツナギの上半身を脱いだ状態の圭ちゃんが奥から出てきて「早速だけど紹介して」と急かすので二人を呼んだ。
修斗は相変わらず人懐っこく、皆んなに握手をしながらライブの感想を喋り始める。そしてえらく気に入った様子で、なかなか圭ちゃんの手を離さないから俺は少しイラついてしまった。
修斗に比べて周はさっきから何も言葉を発しない。どうしたんだろう? 気に入らなかったのかな? いやそんなわけねえよな? 黙ったまんま、圭ちゃんの方をジッと見ているのが気になった。
「俺は坂上圭。お前名前は? ギターやるんだろ?」
圭ちゃんが見てるだけで何も言わない周に気がつき声をかけた。圭ちゃんの自己紹介で、やっと周は口を開いた。
「俺、橘 周。あまねでいいっす…… 」
話したはいいけど、何かまだ言いたそうな顔をしている。
「坂上……圭さん、もしかして父親ってギタリストの坂上泰牙 ?」
圭ちゃんが苦笑いして「そうだ」と答えると、周は大きく息を吸い突然圭ちゃんに抱きついた。
おいおいおい! いきなり何してくれてんだよ! 俺はびっくりして固まっている圭ちゃんから周を引き剥がし、文句を言った。周は興奮しきりで「陽介さんはちょっと黙ってて」なんて言いながら、また圭ちゃんの方に向かって行く。
「ギターめちゃくちゃかっけえって驚いてたらやっぱりだよ! 凄えな! 泰牙みたいだった!」
先程までの素っ気ない態度とは打って変わって大興奮な周に皆んなは呆気にとられる。周はまた圭ちゃんを抱きしめて「会えて光栄」だの「ギター教えて」だの喋りまくっている。すっぽりと抱えられてしまった圭ちゃんは小柄だから後ろからだと全く見えない。
「周っ! わかったから……苦しいって、離して……」
圭ちゃんの声に俺はまた慌てて周を引き離した。
「俺! 俺、ライブ見て初めて無茶苦茶感動した! こんなギター弾く奴いるんだって! マジ凄え!」
興奮状態の周を遠巻きに眺めながら「周は圭の事えらく気に入ったみたいだな」と靖史が笑った。
圭ちゃんは、ちょっと照れたように周を見ている。
「俺、これからバイト二時間ほど入ってんだ。打ち上げ場所決まったら連絡して」
俺は周の態度にちょっと不安を残しつつ、バイトが入っているのでそう声をかけ、ライブハウスを後にした。
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