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打ち上げ
俺はバイトが終わると急いで携帯をチェックした。
圭ちゃんからのメールには「いつもの場所だよ」と打ち上げ場所が書いてあった。そのまま着替えて真っ直ぐ店に向かった。
さっきの周の態度──
普通、初対面の人間に抱きつくか? まあ圭ちゃんの父親、泰牙の大ファンだからってのもあるんだろうけど……嬉しくて思わず興奮してああいう態度になってしまったんだよな? あまり深く考えるのはよそう、そう思っても、やっぱりあの態度は俺は気に食わなかった。
圭ちゃん達のいる部屋に行くと、廊下に修斗が立っている。
「あれ? 修斗どうした?」
修斗はヘラヘラと笑い「便所から帰ってきました!」とご機嫌だ。もう酔っ払ってるのかな? こいつは普段もこんなテンションだからよくわからなかった。
「陽介さん、聞いて! もう周ってば凄いの! 憧れのギタリストの息子さんだってわかって大興奮。さっきから圭さんから離れねえ離れねえ……」
修斗が楽しそうにそう言った。
俺が扉を開けると、目に飛び込んできたのは周の足の間に座ってご機嫌で呑んでる圭ちゃんと、後ろから圭ちゃんを抱きかかえるように座り、顔を寄せて話してる周の姿。
は? ……なんだこの光景は?
圭ちゃんが俺に気付き、満面の笑みで手を振っている。
「やっと陽介来た! 待ってたよ。周と修斗、一緒にバンドやることになったからね。紹介してくれてありがと」
いつもと変わらずの圭ちゃんの様子に俺は少し困惑した。圭ちゃんも酔っ払ってるのかな。
あの体勢は別に気にならないのか……
くっつき過ぎだと思うんだけど、とりあえず俺は気にくわない。
俺は靖史の隣に座り、ビールを頼む。
「圭ちゃんと周、ずっとああなの?」
靖史に聞いてみると、そうだと頷く。嘘だろ? やめさせろよ……
「移動中も、どんな手があんな凄いギターを弾くんだ? って、圭の手を握ってまじまじ見てたし、相当気に入ったんだな、圭のこと」
とりあえず圭ちゃんが嫌がってるわけじゃないならいいんだけど、なんだかやっぱり俺は面白くない。
靖史と喋っていたら、いつの間に圭ちゃんが俺の隣に座ってた。
「陽介来るの遅いから、俺酔っ払っちゃったよ。今日は送ってってね」
圭ちゃんがグッと俺に顔を寄せて甘えたように言ってきた。
顔が近い! やめて! キスしたくなっちゃう。
周の方を見ると、今度は透君を捕まえて楽しげに呑んでいた。周に捕まった透君はちょっと困った顔をしてる。
そうだよな……うん、あれが普通の反応だ。
圭ちゃん、酔っ払ってんだな。
やっぱり周、くっつきすぎだって。
俺は怒りが湧いてきたのをグッと堪え、圭ちゃんと一緒に酒を飲んだ。
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