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NO!ボディタッチ!
打ち上げがお開きになり、みんなで外に出る。
俺は周対策として圭ちゃんの側でガードするように立っていた。
何べん考えたって圭ちゃんが他の男にくっつかれるのは嫌だった。
「ほんと、よかったよ! 周がギターやってくれるから、俺はボーカルに専念できるし」
俺の気も知らないで、ご機嫌な圭ちゃんは嬉しそうに周に近寄って行く。そうだよ…… 最初ギターをやりたくなくて俺に頼んできてたくらいだから。でもお願いだからこれ以上周に近付かないでくれ……
「ダメですって! 圭さんのギターは最強なんだから!ギターボーカル!」
「まあ、たまにならね 」
圭ちゃんは周の話はあんまり聞いてなさそうに、適当な返事をしている。楽しそうで何より。そんなことより早く周から離れてほしい。
透君も修斗と話し込んでいて、修斗が真面目な顔をしている。あんな真面目な顔もできるんだな。
しばらくして透君と靖史が帰っていった。俺らもそろそろ……と思ったタイミングで「じゃ、明日スタジオな!」と圭ちゃんが声をかけた。
圭ちゃんの声に周が「えー?」と素っ頓狂な声を上げる。
「なんで? もう帰るんすか??」
どうやら周はまだ話し足りないようで、明らかに圭ちゃんを引き止めようとしていた。
「だめだよ、俺 今日飲み過ぎちゃったもん」
圭ちゃんが俺の腕にしがみつきながら可愛く言った。
そうそう、邪魔者はさっさと帰れ帰れ!
「周も修斗連れて早よ帰れって……」
周は圭ちゃんに近づき、おもむろに頬を触った。
はい?
「圭さん、そんな酔ってます? まだ全然大丈夫でしょ?」
そう言いながら圭ちゃんの頬を撫でている周に俺は呆気にとられてしまった。
圭ちゃんは というと、ニコニコとされるがまま。
……やっぱり酔ってるんだ。
さっきからなんでこいつはいちいち圭ちゃんに触るんだ??
「圭ちゃん酔ってるし、俺らも帰るから……また明日スタジオでな」
俺は慌てて周から圭ちゃんを引き離した。
すると何を思ったのか周が圭ちゃんの腕を掴み、抱き寄せようとした。
「圭さんは俺が送りますよ」
いやいやいやいや! 無理だって! 何なのこいつ!
「あのなぁ! 周…… 」
いい加減腹が立って文句を言いかけたら、ふわっと圭ちゃんが腕を上げ周の手を払った。
「周ありがと。でも俺、陽介と帰るから大丈夫」
そう言って圭ちゃんは笑い、俺にもたれるようにしてギュッと腕に掴まった。
……あぶね、危うく周にキレるとこだった。
遠巻きに見ていた修斗が周に声をかける。
「周! 帰るぞー。俺送って。酔っ払らっちゃったー早く来てえ」
しょうがねぇなと周は修斗の肩に手を回し、「また明日スタジオで!」と帰って行った。
やれやれ……
俺も圭ちゃんをギュっと抱き寄せ「圭ちゃん帰るよ!」と言うと、ふにゃっと体を預けたまま圭ちゃんも頷き歩き出す。
全く、こんなになっちゃって…… 何やってんだよもう。無防備すぎるだろ。
ピンで留めて少し露わになってる圭ちゃんのおでこに、俺は軽くチュッとした。
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