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親父

ちょっとフラフラしている圭ちゃんを連れて家に帰る。圭ちゃんの部屋に着くと、ますます酔いが回ってきたのか足が覚束なくなっていた。 ソファにドスンと腰を下ろすと気持ち良さそうな顔をして今にも寝てしまいそう。少し赤らんだ圭ちゃんの頬に手を添えると、それに気付いた圭ちゃんが嬉しそうに手を重ねてきた。 「陽介ごめんね。俺飲み過ぎちゃった……」 見りゃわかるよ。 「圭ちゃんらしくないね、そんなになるまで飲んじゃって」 はっきり言って圭ちゃんは俺なんかより全然酒に強いと思っていた。こんなになっているのは初めてのこと…… 俺が圭ちゃんの横に座ると俺の肩に頭を預けて話し出した。 「周がギター始めたのって坂上泰牙の影響なんだってさ……」 軽く笑って圭ちゃんは続ける。 「俺さ、小さい頃からギターやってて、勿論きっかけは親父かもしれないけど…… 俺はギターが好きなんだよ。好きだから沢山練習もしたし…… でも、まわりの大人はみんな俺のことを‘泰牙の息子‘って目で見るんだ」 圭ちゃんは俺に体を預けたまま下を向いてしまった。 「俺は坂上泰牙の息子だからギターやってんじゃねえのにさ。俺が注目されればされるほど泰牙の名前が出てくる…… 凄えそれが嫌で嫌で…… 頑張っても頑張っても、親父の影が俺のまわりにチラつくのがムカつくんだよね。親の七光りとか言う奴もいるしさ。もううんざりだったんだ…… それで親説得して一人で日本に来たんだ。でもさ、周があんなに泰牙の事を褒めちぎってんの聞いて 嬉しい自分もいるんだよ…… 大っ嫌いなはずなのに、泰牙の事褒められて嬉しく思うの何なんだろうねえ」 俺は黙って圭ちゃんの話を聞いていた。俺なんかじゃわからない、色んな思いや葛藤なんかがあったんだろうな…… 「俺は親父が嫌いなんだ。でも’坂上泰牙‘って言うギタリストはきっと好きなんだろうな…… なんだろう。周が俺のギターがすげえ!って言うのも、泰牙のギターみたいだ!って言うのも、嬉しいと思う自分と、ムカついてる自分もいて…… なんかよくわからなくなっちゃった」 圭ちゃんが俺に親父さんの話するの初めてだな…… 「そんなことをね、ぐるぐるぐるぐる考えてたらいつの間にか飲み過ぎちゃったみたい……」 下を向いていた圭ちゃんが、へへっと笑って俺を見た。 目が潤んでる…… 俺は思わず圭ちゃんをぎゅっと抱きしめた。 「俺は圭ちゃんのギターが好きだよ。圭ちゃんの歌もギターも、みんな好き」 「……やっぱり親父、坂上泰牙は凄いよ…… ムカつくけどな……」 俺の腕の中で圭ちゃんがくてっとなった。 あ、寝ちゃったし…… 圭ちゃん、こんなに酔っ払っちゃって。 圭ちゃんの柔らかい髪を指で弄りながら、俺はさっきの周の行動を思い返した。 ……やっぱりあれはやり過ぎだよな。 圭ちゃん、可愛いからな。あいつはどんな感情で圭ちゃんのことを見ているんだろう…… 心配だな── てかさ! 圭ちゃん起きてよ。本気で寝ちゃうの? 俺はそっと寄りかかる圭ちゃんから避けると、寝ている圭ちゃんの唇にキスをした。 起きないし…… 唇から首筋、耳朶を軽く噛むとやっと目が覚めたのか、可愛い声が出始めた。 「んっふ……ん……ん? んん……」 唇を塞ぎ舌を絡めていると圭ちゃんはギュっと俺の腕にしがみついてきた。イヤらしいキスをするといつもこうやって俺にしがみついてくるんだよね。可愛いんだ…… 「圭ちゃん、寝るならお風呂入ってから」 俺の声にはっきり目覚めた圭ちゃんは「んっー」と言って腕を伸ばして伸びをした。 「うん、ごめん……寝ちゃった。お風呂いく」

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