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ドMスイッチ

陽介が怒ってる── 酔っ払っていたとはいえ、俺は周といちゃいちゃして陽介を怒らせてしまった。 ちゃんと意識はある。記憶を無くすほど飲んでたわけじゃない…… 周がやたら親父のことを話してきて、俺の事もべた褒めだったから気分がよくなっちゃったんだ。親父は嫌いだけど、ファンだと言われれば悪い気はしないし、嬉しかったんだよな…… 飲んでた時は上機嫌で気がつかなかったけど、そりゃ嫌だよ。自分の恋人が違う男と密着してんだもん。もし陽介が俺じゃない誰かと楽しそうにイチャついてたら俺、嫌だ…… 嫌だっていうよりダメだろ。直視できないほどダメージ食らうと思う。 陽介と一緒に風呂に入ると、いつものように陽介は俺を抱えるようにして湯船に浸かった。さっきの周と一緒の体勢だということにすぐに気がつき辛くなる。 「圭ちゃん…… 俺、圭ちゃんが他の奴にベタベタされんのすげえ嫌だ…… 」 うん、わかってる。ごめんね陽介。 謝ろうと思って振り返ると、陽介の顔を見てハッとしてしまった。 陽介は俺が今までに見た事のない悲しい顔をしていた。 居たたまれなくなり思わず体の向きを変えて陽介に抱きついてしまった。 悲しい思いをさせてしまった…… 罪悪感で押しつぶされそう。 ぎゅっと抱きついていると、股間に何か当たるものに気がつく。 こんな心境なのに体はこんなに…… そりゃそうだよね。俺だって陽介と裸でこんなふうに密着していたらこうなっちゃうよ。 「陽介……ごめんね」 別に罪滅ぼしのつもりで触ったんじゃない。自然とそういう気分になってしまっったから……俺は陽介の勃起したペニスにそっと触れたんだ。 「何がごめんねなの? 周に後ろから抱かれて満更でもなかったんだろ?」 まさかの陽介の言葉にショックで体が強張ってしまった。俺の手を乱暴に払うと陽介は冷たい目でじっと見る。 「触んなくていいいからほら、向こう向けよ……」 陽介はそう言って俺を無理やり退かし、また後ろから抱きかかえた。 「周に抱かれて気持ちよくなっちゃった? ……こんな事されなかった?」 「んっ……そんな事、ない…… 」 陽介の手が股間に伸びる。緩々と扱きながらギュっと強く乳首を捻るから、痛くて体を捩って逃れようと陽介を見た。 怖い顔…… 怒ったように俺の体を乱暴に弄る陽介に、俺は罪悪感から強く文句も言えなかった。でも周に対して陽介の言うようなそんな気持ちにはなってないってちゃんと言わなきゃって思うのだけど、陽介に与えられる快感に思うように言葉が出ない。 誤解されて悲しい気持ちも、陽介に対して申し訳ない気持ちもあるのに、こうやって陽介に弄られて気持ちが良くなってしまっている自分がいる。 「こうやって俺じゃない奴に触られてたんだろ? なあ」 「あっ……やだっ…… 」 「どうしたの? 気持ちがいいの? 周にも俺にも気持ちよくしてもらって、そんなエッチな声が出ちゃうの?」 ……違う! 違うのに……そんなこと言うなよ。陽介だってわかってるだろ? 陽介は怒っているっていうのに、俺はなんでこんなに興奮してしまってるのだろう。こんな俺、陽介はどう思う? こんなふうにされて気持ちよくなってるなんて知られたら嫌われてしまうかもしれない……そう思ったら怖かった。 「俺、圭ちゃんが周にいいようにされてんの見て凄え嫌だった。こんな事されてんじゃねえかなぁって、心配だった」 「あっ……ん、やっ……あっ、こんな事……さ、されてなんか……んぁっ、ないから……」 「あれ? 気持ちいいの? この手は誰の手? 周かな? 誰かな?」 やだ…… 陽介、ごめんなさい。 「お風呂の中なのに、ここからヌルヌルいっぱい出てるよ。圭ちゃん、やらしいね」 「ああっ……やっ」 「圭ちゃん、すごいエロい声出ちゃったね? ここ、そんなに気持ちがいい? イっちゃう?……ねぇ、イっちゃう?」 いつもの陽介じゃなかった。こんなに意地悪で乱暴で…… でもこれで怒りがおさまるのなら俺は陽介の言う通りにするから…… ごめんな、陽介。 「やだやめない……まだイッちゃダメだよ?」 いつもと違う陽介にドキドキする。 こんな状況なのにいつも以上に感じてしまってるなんて、幻滅されてしまう…… 「やめてってさぁ……圭ちゃんは周の言うことは聞くのに、俺の言うことは聞けないの? ダメなの? 俺の言う事も聞いてほしかったな……」 陽介の言葉に「言うこと聞くから!だからお願い……許して」としか言えなかった。そしてこれ以上こんな俺を見られたくなくて、顔を隠すようにして陽介に抱きつきながらキスをした。

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