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確認と挑発

次の日、スタジオに入ると既に靖史さんと修斗が来ていた。 圭さんはまだいない。 「圭のやつ、お前らに凄え期待してるからね 」 ニヤッとして先に来ていた靖史さんが俺に言った。そんな事言われてプレッシャーを感じる。 「ちょっとそれ! めっちゃプレッシャー! やめてくださいよ」 修斗もそう言って笑った。 靖史さんは物静かで大人な感じがかっこいいんだよな。同級生だと聞いているけど陽介さんや圭さんより随分と年上に見える …… いや、老けてるって言いたいわけじゃないから。 俺はギターのチューニングをしながら、圭さんを待った。でも然程待たずに慌てた感じで圭さんもスタジオに入ってくる。 「ごめんね、遅れた!」 額に汗を滲ませて走ってきたであろう圭さんはやっぱり可愛い。 もう一度言うけど、俺は男相手に恋愛感情はない。可愛い、触り心地が良さそう、なんだか好き、愛でたい……そんな感じで本能的にどうにも触りたくなるらしい。 圭さんが俺の方を見て、目をキラキラさせてギター弾いてみろと言って急かしてきた。 ちょっと緊張するな。 あの泰牙と同じギターを弾く圭さんが、目の前で俺のギターを弾く姿を見てるなんて……俺は 珍しく緊張してしまった。 「周、凄い! 上手いじゃん! 驚いた! いつからギターやってんの?」 興奮したように圭さんが俺に言う。よかった…… 喜んでもらえた。 「中三から自己流で練習してた…… 」 「相当練習したんだな! すごいよ! 俺 嬉しい!」 にこにこと俺を見つめ圭さんは満足そうにそう言って何度も俺を褒めてくれた。その後、修斗のベースもチェックして、修斗も圭さんと靖史さんに絶賛された。 だって俺らめちゃくちゃ練習したもんな。文句は言わせねえよ。 これから圭さん達と演奏ができるんだと思ったらめちゃくちゃ嬉しくて俺は気分が上がった。 「なあ、今日は陽介来ないの? こないだ借りた漫画返したかったんだよね」 徐に靖史さんが圭さんにそう言った。 は? なんで? 陽介さん、メンバーじゃないのに練習来んの? ここにくんの? 「ん、もうじき来ると思うよ。一旦家戻ってからまた来るって言ってたから」 圭さんも当たり前のようにそう言った。一旦家に戻って? あれ? 昨晩は圭さんの家に泊まったのかな? 俺は昨日の修斗の忠告を思い出した── 『多分だけど圭さんと陽介さん、付き合ってるよ……だからあんな触りまくってたらマズイからな』 マジかよ……超気になる。 陽介さんがスタジオに来ると、圭さんは嬉しそうに俺の話を始めた。 「あ、陽介! ねぇ、聞いて。周ってば凄え上手いよ!ギター」 圭さんは子どもみたいにはしゃいで話している。そんな圭さんを優しい笑顔で見つめている陽介さん。 …… 別に仲良い友達同士じゃねえの? なんだかモヤっとしながら、ご機嫌な圭さんに促されて俺はさっき弾いた曲のさわりをもう一度弾いた。 「うん、上手いね。かっこいいよ」 陽介さんはギターのことがわかってるのかよくわからないけど、とりあえず俺らのことを褒めてくれた。そして部屋の入り口の所へ移動し壁に寄り掛かった。 圭さんは相変わらず俺のギターを褒めてくれるから段々気分も良くなってくる。でも陽介さんがそんな圭さんを微笑ましく見つめてるのが面白くなくて、俺はちょっとした事を思いついてしまった。 どんな反応をするかな? 今日は俺、酔ってないから…… 俺ははしゃぐ圭さんの背後に回り、後ろから抱きついてみた。 圭さんは驚いたのか、物凄く体をビクッとさせたのが可愛かった。 陽介さんを見てみる。 驚いた顔して俺を見てる。 圭さんはその瞬間はどんな顔してるのかは見えなかったけど、少し怯えたような顔して振り返り、何?と俺に聞いた。 「俺…… 圭さんにそんなに褒めて貰えるなんて嬉しすぎる」 そう言って俺は陽介さんの表情を確認しつつ、圭さんのフワフワとした柔らかい髪の毛に顔を埋めた。 ……瞬間、俺はなぜか脇腹の激痛と頬への激痛と共に、後ろの壁に叩きつけられていた。

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