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康介と竜太君

康介と一緒に行く圭ちゃん達のライブ。今夜は竜太君も一緒だった。 無理矢理じゃないのか? どうしても康介が無理矢理誘ったようにしか思えず心配になった。でも、迎えに行ったらきちんと挨拶もしてくれたし、表情の乏しい竜太君が心なしか嬉しそうにも見えたから安心した。本人に聞いても無理矢理じゃないと言っていたからまあ大丈夫なんだろうな。 今夜は康介は竜太君と一緒だから俺は気楽で良かった。ドリンクを飲みながら先に来ていた常連達と話しつつ、後ろで一人佇む竜太君を見つけて話しかけた。康介の奴、竜太君放ったらかしにして何やってんだか…… 前の方を見ると、前回来た時に仲良くなったのか知らない奴と楽しそうに盛り上がっているのが見えた。 「この兄さん達の次がD-ASCH だよ」 兄さん達というのは、今演奏しているバンドの事。圭ちゃん達と一緒にやることが多くて、仲良くなった。親しみを込めてみんなも「兄さん」と呼んでいるんだけど、実は名前は知らないんだ。紹介されてないからね。みんなが兄さんと呼んでるから俺もそうしてるだけ…… あまり細かいことは気にしていないようだから問題ない。 竜太君の隣に立ち、話しかけるけどキョトンとしている。 あ…… 聞こえないか。 俺は竜太君の耳に顔を寄せ、もう一度話しかけた。 「大丈夫? つまんなそうだね。出る?」 音もうるさいし、ノリノリで楽しそうな康介とは違い、竜太君はただぼんやりと壁に寄りかかりステージを見ているだけ。楽しくなかったら一緒に外に出てもいいと思って俺はそう言った。でも目当てのバンドはまだみたいだから大丈夫だと笑顔で竜太君は言ったから、俺は安心してまた元のところに戻った。竜太君の言う「お目当てのバンド」って圭ちゃん達のことだよな? 康介から話は聞いていると思うけど、竜太君も気に入ってくれるといいなとそう思った。 兄さん達の演奏が終わり、次は圭ちゃん達の出番だ── 俺はいつものように少し後ろに下がり、メンバーの登場を待った。 順番にメンバーがステージに出てくる。そしてステージから圭ちゃんが俺を見つけ軽く手を振りウィンクをしてくれた。 今日も圭ちゃんはいつも通りのかっこいい圭ちゃんだ。 D-ASCH のステージも終わり、俺はすぐ控室に向かった。 いつもは俺もライブ後の打ち上げに参加するんだけど、今夜は短時間のバイトが入っている。その事を圭ちゃんに伝え、ついでに康介達の事を話した。 「俺の弟がさ、圭ちゃん達の大ファンになったみたいで毎日うるせえんだよ。ここに連れてきてもいい?」 俺がそう言うと修斗が笑った。 「あ! あの一番前のど真ん中でノリノリだった子でしょ? 前にも来てたよね? 見ない顔だったから気になってたんだけど、陽介さんの弟だったのか! 違う?」 「うん、多分それだわ…… 圭ちゃんいい? 俺はもう出るけどさ、弟の康介とその友達の竜太君。よかったら打ち上げにも連れていってやってよ」 そう圭ちゃんにお願いしてから康介にその事を伝え、俺はバイト先に向かった。歩きながら、時間が間に合えば俺も打ち上げに参加しようと思い、圭ちゃんにそうメッセージを送っておいた。 今日も暇な店内── これといって大したこともなくいつも通りに時間が過ぎ、バイトは終了。ロッカールームで急いで着替え、メールを確認した。 「……いつもの所だな」 圭ちゃんに返信を入れて、打ち上げの会場となっている店へ急いだ。 到着するとちょうどお開きになったところらしく、ぞろぞろと店からみんなが出てくる。思いのほか早く終わったらしく、間に合わなかったのがちょっと残念だった。靖史は兄さん達と二次会に行くと言っている。圭ちゃんも一緒に行くのかな? それなら俺も……と思い康介の姿を探した。 ………? 周に後ろから抱き込まれてるのって竜太君? 俺は去年の圭ちゃんを思い出した。周にベタベタされていた圭ちゃん…… 俺が頭にきてぶっ飛ばしてからは大人しくしていたけど、周の悪い癖かな。大丈夫かな? 「終電も近いしお前らうちに泊まってくか?」 圭ちゃんがいつものように周と修斗に声をかけてる。 「なぁ、兄貴…… 」 いつの間にか横にくっついてる康介に耳打ちされた。 「なんか周さんが竜にべったりで離れねぇんだよ…… 竜、多分もう限界だと思う。助けてやって…… 」 ああ、やっぱりそうか。 「圭ちゃん 悪りい。今日はこいつらと一緒に帰るよ」 俺は圭ちゃんに声をかけ、周に捕まってる竜太君にも声をかけた。案の定、ホッとした顔を見せる竜太君。 こうしてほろ酔いな康介と、ホッとしている竜太君と一緒に家に帰った。

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