92 / 134
留守
圭ちゃんはどこかに出かけてるらしく、マンションは留守だった。合鍵を使って部屋に入り、部屋着に着替えてソファに座る。携帯を確認するも圭ちゃんが俺のメールを読んだ形跡はなく、もちろん返信もこなかった。
……どこに行っているんだろう。買い物かな?
しばらくテレビを眺め、ぼんやり寛ぐ。
そのまま俺はうつらうつらして眠ってしまったらしい。肌寒くなってふと目が覚めると、もうどっぷりと日が暮れて部屋も真っ暗だった。
え……?
「今何時だ?」
圭ちゃんが帰宅している気配もなく不安になった。俺は独り言を言いながら部屋の電気をつける。リビングの時計を見ると既に夜の八時を過ぎていた。
「日が暮れてるどころじゃねぇじゃん。もう夜だし……」
ブツブツ言いながら、俺は携帯を確認した。やっぱり俺のメールは読まれてはおらず、返信もない。
なんだよ…… どこに行ったんだ?
今までこんな風に圭ちゃんの行動がわからなかった事などなかった。
不安な気持ちでドキドキしながら圭ちゃんに電話をかける。
「なんで…… 出ねえんだよ」
何度も電話をしてみたけど、圭ちゃんが電話に出る事はなかった。
「圭ちゃん……腹へったよぉ。早く帰ってきてよ……」
心配で不安でどうしようもなかった。圭ちゃんも捕まらないし、とりあえず靖史に電話をしてみた。
『もっしぃ? 陽介? どした?』
能天気な声で明るく靖史が電話に出る。
「…… 圭ちゃんと連絡とれないんだよ。どこ行っちゃったんだろう? 靖史知らね? ……今までこんな事なかったからさ、俺なんか心配でさ……」
『陽介、今どこ? 』
「圭ちゃんち……」
靖史は何か考え込んでるらしく、少しの沈黙……
『んん…… あ! こないださ、学校で面談があったんだよ。進路のな。それでその時圭の親父は日本に来られなかったから、今日来てたんだよな。圭もやっと面談だって言ってたし…… 多分さ、圭のやつ今頃親父さんと一緒にいるんじゃないかな? 大丈夫だよ。きっと帰ってくるって』
「……親父さん? そっか」
『大丈夫か? 俺んち来るか?』
靖史が俺のことを心配してくれてる。
「ん…… ありがとう、大丈夫。俺、ここににいるよ…… じゃぁな靖史」
『おぅ、またな』
電話を切り、俺はソファに座り直して少し考えた。圭ちゃんの親父さん、日本に来てるのか……
進路、圭ちゃんはどうするのかな?
そういや俺ら、進路の話なんてしてなかったな。
そのままぼんやりと考え事をしながら、ソファに座りまた俺は眠ってしまった。
ともだちにシェアしよう!