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普段と変わらない

圭ちゃんから連絡が来るまで そっとしておこう…… そう思ってからもう何日も過ぎていた。 とりあえず俺は連日バイトのシフトが入っていたからいくらか気が紛れているけど、気にならないって言ったらそれは嘘。 今日はバイトの後、靖史と会う約束をしている。またいつものファーストフード店で待ち合わせた。 バイト先で軽く夜食を食ってきたから、ここではコーヒーだけを注文する。 「おう! 陽介、お疲れ」 いつもと変わらず靖史は和かに俺に手を挙げた。 目の前に座りながら「圭のことだろ?」と、そう俺に聞く。ちゃんと話し合いはしたのか? とか、 悩んでないか? とか色々聞かれたけど、話し合いなんかしていないし、してない……というか話し合いすらさせてもらっていなかった。圭ちゃん、何も言って来ねえんだもん。聞かれたくなさそうなのも見ていてわかるし…… そんな風に言っていたら、靖史が俺を見て溜め息を吐いた。 「こういうのはやっぱりさ、圭の口から言った方がいいからな…… 俺も圭に話しておくよ。それに何をそんなに遠慮してるんだ? もうそんなの今更だろ」 真面目な顔の靖史。その口振りから圭ちゃんは靖史には話しているんだとわかった。大方、この前言っていた進路の事についてだろうけど…… 「靖史は圭ちゃんから何か聞かされたの? 様子がおかしかった理由……」 靖史は俺が遠慮していると言うけれど、きっと遠慮じゃなくて怖いんだ…… 何を思い悩んでるのかは知らないけど、圭ちゃんこそ俺に話せないなんて今更だろ? そう思うからこそ心のどこかで聞きたくない、と思ってしまう。それでも靖史は知っているのなら、と思ってそう聞いてしまった。 靖史は目を泳がせ「まあな」と呟く。 「……簡単には聞かされたけどよ、圭のやつまだ色々と悩んでるみたいだから…… それはわかってやってくれ」 寂しそうな顔をして靖史は言うと、放ったらかしになっていたバーガーを頬張った。 もうじき夏休み── 今年も圭ちゃん達のバンドの合宿、合宿という名の旅行計画の話をした。 今年は周がどうしても竜太君を連れて行かないと嫌だとダダをこねるから、康介と竜太君も一緒だ。 人数も増えて賑やかで楽しそうだな…… そんな話をしてから、俺たちは別れ家に帰った。 「ただいま」 部屋に入り携帯を見ると、圭ちゃんから久々にメールが来ていた。 『今週末空いてる? 久々にデートしよう!』 明るくそう書いてある。俺はすぐに返信をした。 『いいね、どこに行きたいか考えておいてね』 『了解』 普段と何も変わらないメールのやり取り。でも違うところがひとつだけ……今のメールが五日ぶりという事。今までは毎日何かしらメールのやり取りや電話をしていたのに。 五日ぶり…… 圭ちゃんからのメールに少しだけ安心しつつ、悩みを打ち明けてもらえないもどかしさに悶々としながら、それでも俺は黙って待とうと心に思った。

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