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久々のデート

週末、今日は久しぶりのデートだ。 しばらく会ってもいなかったし、楽しみだったはずなのに…… なぜか少し重い足取りで圭ちゃんとの待ち合わせ場所へ向かった。 待ち合わせ場所は圭ちゃんのマンションの近くの小さな公園。俺が行くと既にベンチに圭ちゃんが座っていた。 「久しぶりだし、なんか待ち合わせなんて新鮮だね」 そう言って笑った圭ちゃんの顔が、なんだか寂しそうで俺は見ていられなかった。 「……陽介? 大丈夫?」 そんな俺を見て圭ちゃんが心配してくれる。 「ん…… あんまり大丈夫じゃないかも」 「………… 」 あーあ、圭ちゃん黙っちゃった。俺はベンチに腰掛けると、黙ってしまった圭ちゃんの顔を覗き込んだ。 「ごめんね、うそ。大丈夫だよ。圭ちゃん今日はどこ行く?」 俺がそう話しかけると、遠慮がちに目が合った。弱々しくヘラっと笑って圭ちゃんが立ち上がる。 「あのさ、買い物付き合ってよ。大きめのバッグが欲しいんだよね。夏休みみんなで旅行に行くじゃん? そん時に使えるバッグと、服を少し買いたいんだ」 旅行とか言っちゃって…… バンドの合宿じゃないの? みんな旅行気分で楽しみなのはわかるけどね。 「いいよ。買い物したら飯行こうぜ」 俺たちは二人で並んで歩き出す。人が少ない路地では軽く手を繋いだりして…… 俺たちは手を繋ぐくらいはよくやっている。でも付き合い始めの頃は、ただ二人で出かけるだけでも周りの目が気になった。「男同士だから」そんな事ばかりお互い頭に浮かんでいた。 今思うと、別に男同士、友達同士で出かけたり普通にすることなのにね。当時はそんな小さなことでも気にしていた。 ずっと一緒にいてお互いを思いやって、言葉を交わす事がなくても通じたりする事もある。 一緒にいて当たり前の存在。お互いを分かり合えてるはずの存在…… 俺が感じていることは圭ちゃんにも伝わってるはず。 もっと俺のこと信用してもいいよ、圭ちゃん…… 圭ちゃんの買い物も終わり、昼飯はラーメンが食べたいって言うから近くの有名店へ向かった。 「ラーメンも久々だね」 嬉しそうに圭ちゃんが笑う。目的のラーメン店は既に何組か並んでいたので、仕方がないから最後尾に俺たちも並んだ。この店も圭ちゃんと二人で何度も来たことがある。人気店だからこうやって並ぶのもしょっ中だった。 他愛ない会話……そして途切れる。 「………… 」 無言の状態…… それでも、今までは気不味さもなく普通にいられたはずなのに。 やっぱり今日はダメだな。 「圭ちゃん? これ食ったらさ、圭ちゃんち行っていい? 俺、やっぱりちゃんと話しないとダメだわ……」 俺は堪え性ないんだな。圭ちゃんからの言葉を待つつもりだったけど、無理だった。 圭ちゃんは俺の顔をじっと見つめて、小さく頷いた。

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