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夏休み

それからは圭ちゃんと俺はいつもと変わらず毎日を過ごした── すぐに夏休みがやって来て、俺らは圭ちゃんの親父さんの所有する別荘地のスタジオを二日間借りて、夏合宿という名の旅行に出かけた。 D-ASCH のメンバーと俺と康介、竜太君。 行きの新幹線の中では圭ちゃんの作ったお弁当をみんなで食べた。 ホテルにチェックインしてからスタジオに移動して、夕飯の時間までそこで過ごす。いつもと変わらない圭ちゃんの様子を、少しだけ複雑な気持ちで俺は見ていた。 側から見ればいつもと何も変わらないけど……悩んでるんだよな? この先の事…… 殆ど決まっていると言っていた。何が決まっているんだろう。進学? 留学? 就職…… はないよな。 親父さんは、世界で活躍するギタリストだ。圭ちゃんだって何かしら期待をされてるのは俺だってわかる…… 本当にこの先俺は圭ちゃんと一緒にいられるんだろうか? 考えれば考えるほど不安が募っていった。 スタジオ見学している康介と竜太君を連れて、途中で買い出しもしながら先にホテルに戻った。みんなで夕飯を食べ、部屋に戻って酒を飲んで盛り上がる。竜太君はもうすっかり周に懐いていて、見ていて微笑ましかった。しばらく楽しく飲んでいたけど、俺は圭ちゃんと二人で部屋を抜け出した。 圭ちゃんと靖史、周と修斗、俺と康介と竜太君……って三部屋で部屋割りをした圭ちゃん。どうせ周と竜太君が同じ部屋を使うだろうし、靖史もわかってるから俺はもう荷物を移動していた。 俺は圭ちゃんの部屋に行く。 「………… 」 圭ちゃんは黙ってギターを弾き始めた。俺はしばらくの間、集中している圭ちゃんを見つめる。何を思ってるんだろう…… 「ねぇ圭ちゃん?せっかくこの部屋、露天風呂付いてんだからさ……一緒に入ろうよ 」 この部屋には、露天風呂が付いている。贅沢な部屋。そんなの入らないなんて勿体無い。 しばらく圭ちゃんは黙ってギターを弾いていたけど、しつこく言ってたらどうやら照れていたみたいで「陽介のエロ…… 」と睨まれてしまった。 俺は先に露天風呂へ行く。 暗闇を照らす満天の星、静寂に吸い込まれそう…… 俺の心の中の小さな不安も吸い取ってくれたらいいのにと、少々おセンチになりながらぼんやりと空を見上げた。 しばらくすると圭ちゃんも入ってきた。 俺から少し離れて座る圭ちゃんのところへ近づき後ろから抱きしめる。赤い顔して照れてるのが可愛くてしょうがなかった。 「よ……陽介、やめて……あっ、後ろからだと……んっ、ダメだって……ああ……んっ」 いつもと変わらずにいよう。俺まで考え込むのはよそう…… そう思いながら圭ちゃんを背後から抱きしめる。少し体を弄っただけなのに可愛く声を漏らすから、すぐに堪らなくなってしまった。部屋専用の露天風呂とはいえ隣も同じ作りで露天風呂があるのを知っているから、圭ちゃんは声が聞こえないように手で口を押さえて堪えている。そんな姿がいじらしくて加虐心を煽られた。 「ここじゃのぼせちゃうから、部屋戻ろっか?」 「……うん」 俺は既に力が抜けてしまっている圭ちゃんをお姫様抱っこしてベッドまで運んだ。

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