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予想だにしない告白

この日はどういうわけか、なかなか寝付けなかった。俺の胸の位置に頭を置いて、小さく丸まって眠る圭ちゃんを見つめる。 圭ちゃん、いつも体を丸めて眠るんだよな…… これがまた可愛いんだ。 「陽介…… まだ起きてる?」 小さな声で圭ちゃんが動かずにポツリと言った。寝ているかと思っていたけど起きてたのかな? 少し震えているようなその声に、何となく嫌な感じがして身構えてしまった。 「起きてるよ…… どうした? 寝られない?」 「………… 」 圭ちゃんは俯いて身動きせず、同じ姿勢のままひと呼吸置いて言葉を続けた。 「陽介に聞いてほしいことがあるんだ…… いい?」 「いいよ、なに?」 圭ちゃんは俺に「いい?」なんて聞いておきながら、それから黙ってしまってなかなか話し出さなかった。圭ちゃんが今から話そうとしていることは、俺がずっと待っていた話なんだろうとわかる。やっと俺に話してくれる気になったんだな、と嬉しく思う反面、緊張もした。 少しの沈黙の後、やっと圭ちゃんは話し出した。 「俺さ、春になったら親父んとこ戻るよ…… 元々そういう約束だったんだ。高校卒業するまでって…… D-ASCH も解散。靖史にはもう話した…… 靖史はわかってくれたよ」 とても小さな声だけど、ゆっくりと…… そしてはっきりとした声で圭ちゃんが話す。 「………… 」 圭ちゃんが、親父さんのところに戻る? うん、それは何となく薄々わかっていたことだ。圭ちゃんは、その事をきっと今まで悩んでたんだよな。圭ちゃんが親父さんのところに行くということは、俺との距離が離れてしまうということ…… 今までみたいにこうやって会いたい時に気軽に会えなくなってしまう…… 俺は黙って圭ちゃんの言葉を待った。 「…… 圭ちゃん? どうした?」 俯いた圭ちゃんが、小さく震えてる…… まるで泣くのを堪えてるよう。 大丈夫だよ? そりゃあ会えなくなるのは寂しいけどさ、どうってことない。心配ない…… 「陽介……」 俯いたまま消え入りそうな声で話すから、圭ちゃんが何を言ったのか全く聞き取れなかった。 「なに? 聞こえなかった。圭ちゃんこっち向いて喋ってよ」 ゆっくりと顔を上げて俺を見る圭ちゃんは、やっぱり涙を零して泣いていた。 「圭ちゃん? 俺、大丈夫だよ。泣かないでよ……」 だって、今の時代はネットもテレビ電話も色々あるから…… たとえ遠く離れてたって、そんなに寂しくはないはず。会えない寂しさはあるけど、俺たちなら大丈夫だろ? いつかは圭ちゃんは戻ってくるだろうし、無理なら俺が圭ちゃんの所へ行くことだってできるんだから。 何も心配することはない! そう思って…… そう自分に言い聞かせて、俺は圭ちゃんに「大丈夫」って言ったんだ。 でも、俺の顔を見つめて目から涙を溢れさせながら圭ちゃんが震えて言った言葉は俺が予想もしてなかった言葉だった。 「陽介、俺たち…… 別れよう」

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