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混乱

「なに? 今なんて言ったの? ごめん…… へ? なに? ちょっと俺、わかんないんだけど」 俺は本当に圭ちゃんが何を言ってるのかわからなかった。否…… わかっていたけど、理解したくなかった。 頭が全力で拒否している。 こんなの理解なんて出来るわけがない! 「陽介…… ごめん……」 「は? 何で圭ちゃん謝ってんの? 違くね? ……てか、ほんと何? 何言ったの? ……おかしいよ圭ちゃん、別れる? 何でだよ」 混乱する…… 何で別れるって話になってんだ? 今まで喧嘩したり何したって「別れる」なんて発想は微塵も浮かばなかった。これは圭ちゃんだって同じ筈。 なのに、何で?? 圭ちゃんの顔を見ると、さっきまであんなに涙が溢れていたのにもう涙も消えてすっきりとした顔にも見える。 なんだよ、おかしくねぇか? どんどん混乱していく俺を、圭ちゃんが抱きしめた。 「陽介ごめんな……もう決めたんだ。わかってくれ……」 今度ははっきりと俺の耳に圭ちゃんの言葉が残酷に突き刺さった。 やめてくれよ…… 俺の大好きな声で、そんな事を言わないでくれ! そんなのわかるわけがない!俺はどうしていいかわからず、思わず圭ちゃんに背を向ける。 そして俺は全てを拒否した── 背後で圭ちゃんが何かを言っていたような気もするけど、もう一切俺の耳には入ってこなかった。やってることがまるでガキみたいだと客観的に見て思うけど、俺はこうすることしかできなかった。これ以上何かを言ったところで、圭ちゃんの口から出てくる言葉は俺にとっては死刑宣告みたいなものだ…… そんなのもう聞きたくない。 それでいい。 それでいいんだ…… 聞きたくないしこれ以上考えたくもない。 そのまま俺は全てを遮断して、圭ちゃんをも拒否して朝まで眠った。 次の日の朝、何事も無かったかのようにすっきりと目が覚めた。隣で寝ていた圭ちゃんはいない。 ペタペタと裸足でリビングまで歩いて行くと、コーヒーのいい匂いが鼻を擽る。 テーブルには置き手紙…… 『今日は俺、学校だから行ってきます』 ちょっとだけ丸まった可愛らしい字で、そう書いてあった。そっか…… 俺は文化祭の振り替えで学校は休みだけど圭ちゃんはそうじゃない。 竜太君と周ももう出たのかな? 二人の姿も既に無かった。 俺はぼんやりと自分のマグカップにコーヒーを注ぐ。 ふと昨晩のことが頭を過った。 別れる…… あれは夢だった? 夢であってほしい。圭ちゃんは何であんな事を言うんだろう。 コーヒーを流し込むようにして一気に飲み、時計を見つめた。 「とりあえず帰るか……」 体がフラフラする。 頭の中は圭ちゃんの「別れよう 」の言葉が蘇り、そして思考が止まる。そんな最悪な気分を繰り返しながら俺は自宅に向かって足を進めた。

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